あの人の妹はFightingGirl！memory (ページ39)

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噛み合い、重なりあって。ページ39

記憶をなくしたときの寂しさ。

どうしようもない空虚感。

先行きの見えなさから来る、不安と焦り。

宮さんに会ったときの安心感。

すべてを思い出した喜び。

誰のものかもわからない暖かさ。

「待ってるから」というギータの言葉。

「約束したやん」という友哉の怒り。

「Aならできる」という師匠の激励。

一つ一つの歯車は、複雑に噛み合い、重なりあって、今の私をここに立たせてる。

その感謝はバットで伝えるつもりだ。

一、二球目は外してボール、三球目は空振り。

落ち着いて、いつもの私がいればいいから。

自分に言い聞かせ、もう一度、ベンチから、スタンドからの力を感じてみる。

『ああ、そうか…』

一人じゃ、ないんだ。

私には、皆がいるんだ。

深呼吸をして、バットを構え直す。

少し甘いところに来たスライダーを捉え、力の限り左中間を突き破る。

『(遥輝の足なら…帰れる？)』

不安だったけど、私が二塁を踏んだすぐ後。

ホームを見れば既に三人はベースを踏んだ後だった。

沸き上がるスタンドの声が鼓膜に響いてくる。

『あ…やったのか、私。』

復帰後初打席は、逆転のタイムリーツーベースでした。