二刀流は大型犬と大差ない

20 ページ20

例の熱愛報道が出てから17日後、公的にAの試合欠場が発表されてから10日後。俺たちエンゼルスは負けに負けを重ねていた。

10日間のうち7回行われた試合は勝った試合が2回、負けた試合が5回となんとも情けない結果に終わっている。



……それもこれも、俺の相棒であるAがいないからだ。
メンバーの士気は下がるし、調子も出ない。

最近ようやく復帰し始め、ベンチに座るようになったA。ちなみに勝った2回はどちらもAがベンチにいたからなんだけどね。

Aの精神状態は安定しつつある。また、エンゼルスが熱愛を否定するというなんとも異例な出来事にAを批判するような人もほとんど居なくなった。

俺たちの過保護っぷりは治ってない！とAはうるさい。変える気は無いけど。



「A、初っ端からホームラン打ってよ！」

『おう、当たり前だろー！』


素振りをしていたAは気合十分で、ゆっくり歩いてバットを構える。

今日はAが復帰して初めの試合だ。観客もいつもの3割増位の人数がいる。

初球ボール、2球目見逃しストライク。そして、3球目。振ったバットに寸分違わずボールが当たり、凄い勢いで飛んでいく。

そしてそのまま観客席に落ちた。一瞬の静寂の後、割れんばかりの歓声が響き渡る。


Aの紅潮した顔に大きな兜がよく映えた。ぎゅっと体を抱きしめて持ち上げて、ぐるぐると回す。

やめろって！という声が上がるが俺の気は済まない。本当はもっと抱きしめたかったが、後ろからの目線が痛かったからとりあえずスアレスに渡した。



その後は勢いづいたエンゼルスの快進撃で7点差をつけて勝利となった。

その日の主役は確実にAだった。試合後はきっとアメリカや日本でもA完全復活という見出しとともに大きく賑わうことにになるだろう。






(リクエストありがとうございました！これにて熱愛編は終わりです！更新が空いてしまってすみませんでした……。次からは今更感凄いですが少しずつWBCの方も書いていきたいなーなんて思っています！)

続く  (更新停止中) お気に入り登録で更新通知を受け取ろう

←19

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す