紅一点の日々【TREASURE】

・ ページ31

『おはよ、ヨシくん』




そう、出たのは今日の主人公、ヨシくん。




『ごめん！色々準備してたら鳴ってたん気づかんやった』




なんなら少し息切れしながらそう言うヨシくん。

本当に急いで出てきたみたいでよく見ると服も髪も少し乱れていた。



なんだか少し悪いことしちゃったな、
本来の約束の時間は12:00。
私の勝手な都合で随分と焦らせてしまったことに申し訳なくなる。




『ごめんね、ヨシくん、ちょっと色々あって大分早く来ちゃった』

『焦らせちゃったよね、』





申し訳ない気持ちを込めてそう言うと、何も考えることなく即答で





『そんなん全然ええで！』

『なんならAに早く会えてラッキー！』

『でもまだちょっと準備出来てへんから中で待ってて！』





と勢いよく答えると、
そのままドアを大きく開けて、私に入るよう促した。



やっぱりヨシくんはヨシくんだ。

どこまでも優しくて、しかもこれが私に気を使わせないようにとかじゃなく心から素直に言ってるんだからもう適わない。


そんな優しいヨシくんに思わず笑みがこぼれて、




『ありがとう、じゃあお邪魔します』




そう言ってもはや入り慣れた宿舎に足を踏み入れた。




『いらっしゃーい！』




嬉しそうに、楽しそうに、まるでテーマパークのクルーがお客さんを迎え入れるみたいにヨシくんはそう言う。

あんなに焦らせちゃったのに、随分と楽しそう。

さっきまで本当に申し訳ない気持ちだったのに、そんな明るいヨシくんを見てると、自分まで、まぁいいか、なんて気持ちになってしまう。

本当は良くないんだけど、これがヨシくんの優しさパワーで凄いところ。




『なんかヨシくん、ユニバのクルーさんみたい笑』




あまりにも嬉しそうなヨシくんにつられて私も笑いながらそう言うと、




『あはっ、ほんまや笑』

『夢の世界へようこそー！』




だなんてノリノリのヨシくん。
年上なのに可愛い。

・→←episode5

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す