色恋に興味がない男の話【不死川実弥】

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「お前から誘うなんて珍しいな？」

「あァ。聞きてぇことがあってよ」



過去に不死川から飯に誘われた記憶はないから、多分今日が初めてだ。その聞きたいことっつーのは大方想像がついている。



「……………好きな女が、できた」



でけぇ口でカツ丼を食いながらぽつりと出た言葉は可笑しいくらい小さくて。揶揄いたい衝動に駆られたが、俺に頼って話してくれたことが正直嬉しくもあって。



「あの子だろ？」

「あァ……どうしたらいいんだァ」

「どうしたらってなんだよ。恋仲になってほしいって言やぁいいんだよ」

「恋仲……」



んな雄々しい身体をしながら"恋仲"という単語に反応して顔を赤く染める此奴。自分にはない初心さに一緒にいるこっちまで照れくさくなる。



「A、っつったっけ？その子はお前のこと好きなんだろ？」

「……多分なァ」

「なら怖いもんねぇじゃねぇか！」

「………」

「何が不安なんだおい」



空っぽになった丼をじっと睨みつけながら、何を言い出すのかと思ったら、その思考回路は俺の想像の斜め上をいっていた。



「いきなり呼び捨てで呼んでも……いいもんかァ？」

「は？呼べよ。てか今までどうしてたんだよ」

「名前なんて呼んだことねぇわァ」



正気かコイツ…と疑うとともに、果たして大丈夫だろうか、うまくいくんだろうかと少し心配にすらなる。でも、毎週毎週会っていたらしいし、彼女もきっと不死川がそういう奴というのを分かっているはずだろう。


「良いか？よく聞け不死川。女ってのはな……？」


それから一時間ほどみっちり、女がしてもらって喜ぶことや言われて喜ぶ言葉を叩き込んでやった。

うまくいったら、派手に祝杯をあげてやろう。この祭の神の俺様がな。

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