色恋に興味がない男の話【不死川実弥】

21.〜Another side〜 ページ25

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あの日、不死川さんに抱きしめられた日、

　" もしかして "

と、思ってしまった。目の前の不死川さんが、私と同じように頬を赤らめていたから。





私の不死川さんへの想いは日に日に募っていくばかりだった。




任務時の頼もしさ、強さは勿論。ヘマをしてしまったときは厳しく叱ってくれるところも。

二人でいる時にたまに見せてくれる柔らかい笑顔も。

一緒に歩く時は私にペースを合わせてゆっくり歩いてくださるし、わざわざ家まで送ってくださる、その優しさも。



全部愛おしくて。



あの日酷く振られたことは、都合よく私の頭の中から消え去ってしまっていた。




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お館様のところへ、任務報告に向かっているときだった。



「好きなんだろ？」

「…別にそんなんじゃねェ」



向こうから歩いてくる彼に気付き、反射的に木の影に身を隠す…。



「お前、好きでもねぇ女と二人で甘味処になんか行く奴か？」

「泣かせちまった罪滅ぼしみたいなもんだ」

「へぇー？」

「好きでもなんでもねェ」





　ー罪滅ぼし


　ー好きでもなんでもねェ



その言葉が頭の中を反芻する。彼が通り過ぎて居なくなった後も、暫くその場から動けなくて、心臓が煩く鳴り続けているばかり。





　ー俺は色恋には一切の興味がねェ




……あぁ、そっか。そうだった。




私は、彼に振られた身だ。


何を勘違いし、浮かれていたんだろう。身の程知らず。自惚れ。情けない。恥ずかしい。

そう、優しい彼はただ"罪滅ぼし"のつもりで私の相手をしてくれていただけだ………何故そんな簡単なことにも気付かなかったんだろう。

哀しみもさることながら、不死川さんへの申し訳なさが胸に広がっていく。これ以上、気を遣わせてはいけない…"罪滅ぼし"なんて、して頂く必要も、ない。





だから、

その翌週も、翌々週も、

私は甘味処に行かなかった。



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