其ノ拾参 ページ14
｢なっ……！！｣
声がした方を振り向くと、ワナワナと震え出す不死川さん。
立っていたのは、
｢なァンでてめぇここにいるんだァ！冨岡ァ！！｣
水柱の冨岡義勇だった。
｢いや、たまたまこの店に寄ったら二人がいたから様子を見ていたんだ｣
様子を見ていた……？
じゃあ全部見られてたってこと……！？
｢えぇ！！！様子見るより話しかけてくださいよ！！？｣
｢すまない。2人がとてもいい雰囲気だったからな｣
とんでもない発言をする冨岡に思わず2人は固まる。
｢なっ……なっ……｣
もう言葉すら出ない。
｢だァァァ！！帰るぞ俺はァ！｣
｢なぜだ？二人は付き合ってるんじゃないのか｣
もうあの不死川さんでさえ、目見開いてポカンてしちゃってるよ。冨岡さんもうやめて。
｢付き合ってないです！/ねェよォ！！｣
｢ふむ、そうなのか｣
そう言いスタスタとお店に入っていった。
なんだこの、一時の嵐が過ぎ去った感……とても疲れる。
｢…………行くぞォ｣
｢は、はい！｣
帰り道、終始沈黙が続いた。
話しかけようと思ってもなかなか話せない。何を話せばいいのかわからない。
｢……お前ェ｣
｢なっなんです？？｣
｢……なんで最初だけ下の名前で呼んだァ｣
｢えぇっと……｣
理由がないからしどろもどろしていると、
｢……呼べェ｣
｢？？｣
｢これから、稽古してる時以外、名前でで呼んでいいつってんだよォ｣
背を向けたまま話す不死川。
｢えっ、ホントにいいんですか？｣
｢……いいつってんだろォ……、稽古の時以外だからなァ｣
そんな頑なに稽古の時呼ばれるのは嫌なのか。
｢じゃあ……呼ばせて頂きますね。実弥さん｣
｢あァ……｣
｢……私の名前……呼んでもいいですよ｣
｢あァ？なんで上からなんだよ｣
頭をがっちり掴まれてこめかみにくい込む。
｢いただだだだ！！！だって……恥ずかしいじゃないですか！｣
｢っ！……｣
黙って手を離す不死川を涙目に睨むとすぐ目を逸らされた。
｢うるせェ……気が向いたら呼んでやるよォ……｣
｢じゃあその日まで待ちますね！｣
｢……勝手にしやがれェ｣
ニコニコと隣を歩くとまぁ目も合わせずにスタスタと歩いていく不死川。ホントに足速い。
｢幸せだ｣
｢……良かったなァ単純な頭で｣
｢サラッとひどいこと言いますよね！実弥さん！｣
｢……うるせェ｣
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作者名：かふぇもか | 作成日時：2019年11月3日 15時
