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『言い忘れてたことがあって、あとで
桜の木の下に来てもらってもいいですか』



そう連絡して、自分を落ち着かせるためにしばらく校内を歩く。


「あ、大倉せんぱ…」


生徒がまばらになってきた頃、保健室に見つけたのは、大倉先輩。



すぐに踵を返した。



自分の目に映った光景を洗い流すかのように溢れ出る涙。



早く止めなければいけないのに、まぶたの裏にこびりついてしまったあの光景は、なかなか流されてくれない。



あれは、渋谷先生。



軽く背伸びをする渋谷先生を、大倉先輩が抱きとめて顔を寄せる。



「亮ちゃん!」



「待った?」とふにゃっと笑って向かってくる。


「目真っ赤やで?そんなに泣いてくれたん?うれしい〜」


よく動くその唇


「忘れてたことって?」


ここで奪ったら、どうなりますか







「お幸せに」






少し驚いてまたふわっと笑うと


また、くしゃくしゃと俺の頭を撫でる






あぁ、桜。きらいになりそうやな…




end.

タカラバコ 〜黒・緑〜→←舞い散る欠片 〜黄・緑〜



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作者名:時音 | 作成日時:2021年2月15日 22時

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