煉獄さんはむつかしい

6話 ページ7

杏寿郎side




俯いて、小さな声で言う彼女の声を聞いた。





……よもや見合いなんて誰が予想しただろう。



予想もしていなかった言葉に頭の中が揺れる
見合い…？





そうか、彼女ももう二十歳だ。
仕方がないことだろう。





そう、自分を頭の中で説得しようとする。

そもそも二十歳で見合いは遅いほうだ。
もう結婚していてもおかしくない。

Aは家柄もいいし、縁談を持ち込まれても少しもおかしくない。






しかし、Aが他の男と…




何も考えることができない。

胸が締め付けられるように鈍く痛む



しかしAの口振りから察するに、彼女の気持ちはその男に寄っていないことがわかる。





…………ならその男のものにはなるまい。



彼女は誰の物でもないとわかっている。だが…


　
俺の部屋でちょこんと座り
一生懸命に話すAは小さい頃から本当に可愛い。




少し不思議で、何を考えているかわからないところも、また愛おしい。
　





恋愛的な好意を自覚したのは3年前の夏頃。


妙にくすぐったい気持ちだった。
戸惑い、父上に相談すると、それは恋だなと笑われた。



自分の気持ちの変化に頭が追いつかなかった。
Aと目を合わせるだけで胸が高鳴った。



他の女子とは普通に会話ができたのに、Aだけはうまくできなかった。


じれったくて何もできない自分が情けなかった。






ただひたすら鍛錬に打ち込んだ。
父上と鍛錬するうちに忘れられると思っていた。





…しかしその気持ちは汗を流すたびに強くなり


君を…人を…守れる強さを手に入れているような気がして嬉しかった。









　


　


誰にも、とられたくない。

　








　

わかっているんだ、君は誰のものでもないと。しかし俺は……

「私だって好きな人と」


その言葉を聞いた瞬間、
頭を強く殴られた気がした。








Aに好きな男がいるかもしれない。


彼女の気持ちを何よりも大切にしたいと思っていた。




しかし

この胸を灼くような痛みを抱く相手がいるのかもしれない。

君の心に俺ではない男がいるかもしれないと思ったら、







　

俺の口は勝手に開いていた









『………好きな男がいるのか……？A』







杏寿郎sideおわり！！

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