M!LKで桃太郎其の弐 (ページ34)

今日:1 hit、昨日:0 hit、合計:3,551 hit

　ページ34

佐野「お前ら……！余計なことは口にするなとあれほど言っただろ！！」

子供「ごめん勇斗兄ちゃん……。でも、勇斗兄ちゃんをいじめる奴は、許さない！」

仁人「………」

それを黙ってみていた仁人は、振り上げたままの刀を下ろし、それを舜太にそっと手渡しました。

仁人「舜太殿……これはお返しいたします……」

舜太「え？あ、あぁ……。もういいのか……？」

仁人「はい……。かような罪もない子供達の前で人を斬るなど、できません……。それに、もうよいのです……。
私は、あいつを許しました……」

太智「仁人先生……」

人を許すというのは、口に出すよりも難しいことです。
けれど、言霊にすることで、仁人は精一杯、佐野に対する恨みの念を抑え込めている様でした。

仁人「これを飲みなさい。体の痺れがじきに良くなります……」

そして、手に持った小さな竹筒を、佐野の前に置くと、彼に背を向けて歩き出しました。
あの中には、毒を解毒する薬草を煎じたものが入っているのです。

仁人「さ、盗られたものは奪い返したのです。私たちはもう行きましょう……」

太智「うん……。そうだね」

舜太「……」

舜太はあまり納得のいかぬ顔を浮かべておりましたが、それ以上は何も言わず、しぶしぶ仁人の後に続いて、佐野の前から姿を消していったのでした。

―
　