M!LKで桃太郎其の弐 (ページ33)

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仁人「っ？！」

驚いた仁人は、刀を振り下ろす前になんとか思いとどまることができました。
けれども、割って入る子供は、その一人だけではありませんでした。
あの洞穴の小さな隙間から、わらわらと齢十にも満たないような小さな子供が十数人あまり出てきたのです。
そして、その全員が佐野を守るように両手を広げました。

舜太「こいつ、こんな子供まで攫(さら)ってやがったのか？！なんて悪い奴なんだ……！」

子供「違う！！勇斗兄ちゃんはおらたちを助けてくれたんだ！」

太智「ど、どういうこと？」

佐野「お、お前ら……！何で出てきた？！早く戻れ！！」

子供「やだ！勇斗兄ちゃんを助けるんだ！」

一人の子供の言葉で、その他の子供らも力強くうなずくのです。

子供「勇斗兄ちゃんは、おらたちみたいな親のいない子供の為に、盗んだものを売った金で、いつもご馳走や服を買ってきてくれるんだ！そうやって、おらたちをいつも世話してくれてるんだぞ！
なのに、何でこんな風にいじめるんだ！！」

そうだそうだと、子供らは全員舜太たちをにらみつけておりました。

太智「この子たち、皆親がいない孤児なのか……？」

子供「さっきも、今日はとびきりのご馳走を買ってきてやるからなって言ってくれたんだぞ！
だから、勇斗兄ちゃんは悪い奴なんかじゃない！！」

太智「その為に、おいらたちの物を盗んだのか……。で、でも……」

人から物を盗むことが悪いことだと、この子らにはきっとわからないのでしょう。
純粋な眼差しは、時には無知であります。
そして、無知は時に、罪なものでもあります。
けれど、それを責める権利がどこにありましょう。
だから太智は、口を噤(つぐ)みました。