ページ4
仁人「と、いうことがございました。太智殿はかなり頭のきれるお人だ。きっとこれから雨だって降りましょう」
舜太「本当かなぁ……」
半信半疑の舜太でありましたが、それからほどなくして、空は暗い雲に覆われ、雨の香りが漂ってまいりました。
舜太「うわ……本当に雨が降りそうだ」
太智「だから言ったでしょ？このままじゃまずい……。あらよっと！」
空を見上げていた太智は、何やら思い立ったように一本の背の高い木に飛び乗り、その木の天辺まで枝を蹴って登っていきます。
その姿はまさに山猿がごとし。
なんとも人間離れした軽業にございました。
そして、木の天辺から太智は辺りをくまなく観察を始めるのでした。
太智「どっかに雨宿りできる場所はっと……。
ん……？あれは……！」
その時、何かを発見した太智は下にいる舜太と仁人に叫びます。
太智「おーい！向こうに洞窟が見えるよ！あそこで雨宿りしよう！」
―
轟く激しい雷鳴、そして大粒の雨が森の葉を打ち付ける音。
森の中にはそれらの音しか聞こえません。
さっきまでの晴れ間はどこへやら、分厚い雷雲が陽の光を遮っておりました。
太智「うひゃー想像以上の大雨だ」
仁人「この雨に打たれずに済んだのは幸運ですな。太智殿がいてくれて助かりました」
洞窟の入り口で、鬼退治のために旅を続ける三人衆は打ち付けられる激しい雨風を防ぐために雨宿りをしておりました。
この旅で太智がいなければ、きっと今頃この激しい雨に打たれていたことでしょう。
舜太「本当に雨が降るなんて、あんた、山猿の占い師か何かか？」
太智「違うよ！さっきも言ったみたいに、急に冷たい風が吹いてきたり、風上に変な形の雲があれば、雨が降る前兆なんだよ」
仁人「舜太殿とは違って、太智殿は博識なのですよ」
舜太「ハクシキ？何それ？」
仁人「はぁ……。博識とは、色んなことを智り及んでいるということでございます。
舜太殿とはまるで反対ですな」
舜太「うん？もしかして、なんか馬鹿にされてる？」
仁人「おぉ、お分かりになられましたか？偉い偉い」
舜太「俺、えらいのか？もしかして褒められてる？」
仁人「……まぁ、ある意味褒めております」
太智「あはは、面白いね、大将も仁人先生も」
舜太「なぁ、その大将って言うのやめてくれるか？なんだか体がむず痒い」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：milkssss | 作成日時：2020年7月13日 21時
