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ひんやりとした柔らかい布で、何やら額を撫でられている感触が広がり、舜太は目を覚ましました。
まだほんのり額に心地いい冷たさが広がっています。
舜太「っ!あいつは?!」
急に途切れた記憶をたどり、先ほどまで戦っていた佐野という男の事を思い出し、舜太は飛び起きました。
けれど、すでに佐野の姿などどこにもなく、横には心配そうにこちらを覗き込む仁人と太智の顔があるだけでした。
仁人「舜太殿……!お気づきになられましたか?!」
太智「大将、大丈夫かい?」
舜太「あんたら……。あ、あれ?!俺の刀は?!」
自分の腰辺りに違和感を感じた舜太は、すぐに自分の体を隅々まで見回しておりました。
怪我などはしていませんでしたが、けれども、刀はおろか、太智がこしらえてくれた防具すら身に着けてはおりません。
もちろん、仁人と太智も、元の小袖袴。
太智「ごめんよ、大将……。おいらも戦ったんだけど……全部あいつに持っていかれちまったみたいだ……」
仁人「……」
項垂れる二人を前に、舜太は段々と憤りを覚え、地面の砂を握りしめると、それを思い切り二人に投げつけました。
舜太「くそ!くそ!!くそ!!!あれがなかったら、鬼を殺せないじゃんか!!!何なんだよあいつ!!!」
いとも簡単にやられてしまった自分が不甲斐ないあまりか、刀まで奪われてしまい、舜太はどうすればよいのか分かりません。
ただ湧き上がる怒りを、感情に身を任せて爆発させておりました。
太智「ねえ、仁人先生……。あいつとは、どんな関係だったの……?それに、仁人先生が……あいつと同じ盗賊団だったって、どういうこと……?」
仁人と佐野は確かに昔馴染のような雰囲気でありました。
それに、仁人が言っていたのです。
かつて同じ盗賊団にいた、と。
佐野という男を紐解くには、今目の前にいる、医者だと称するこの男に聞くよりほかありません。
それを聞き、仁人は深くため息をつくと、徐に口を開けて、話し始めました。
仁人「……あれは……今より十年程前のことです……」
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作者名:milkssss | 作成日時:2020年7月13日 21時