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舜太「やった……！」
片腕を失ってもがき苦しむ鬼に、止めを。
心の臓に狙いを定め、舜太は再び刀を振るいます。
けれどその時、舜太は背後から強い衝撃を受け、吹き飛ばされました。
何が起こったのかと振り返ると、そこには違う鬼が立っていたのです。
そう、鬼は一匹だけではありませんでした。
二匹の鬼は、唸り声をあげて舜太に歩み寄ります。
更に、切り落としたはずの鬼の腕の傷口から、新たな腕が生えてくるのです。
そして、醜い指の先に付いた槍のような爪を光らせ、舜太めがけて目にも留まらぬ速さでその爪を振り下ろしました。
鬼の鋭い爪は、岩をも裂く鋭さ。
人間の皮膚も、骨も、簡単に八つ裂きにしてしまいます。
もちろん、舜太の体も。
肩と首の付け根に、鬼の爪がかすっただけで、激痛と共に血が勢いよく吹きだすのが見えました。
あまりの痛みに舜太は悲鳴を上げてもだえ苦しみます。
舜太(痛みで……意識が飛んでしまいそうだ……)
傷口から噴き出す血を何とか手で抑えて止めようとしますが、あふれる血の勢いは止まりません。
けれど鬼は頭を低くして、
舜太も何とか避けようとしますが、間に合いません。
鬼の頭に備わった二本の鋭い角が、舜太の胸とわき腹に深々と突き刺さり、その細い体を貫いたのです。
これまで感じたことのない痛みで、舜太は絶叫を上げました。
体から、力が抜けていきます。
もう、考えることや、動くこと、果ては息をすることすら困難です。
たった
舜太の手に握られた刀も、今はだらんと垂れさがった指の間に引っかかっているだけ。
舜太(こんな……ところで……俺は……
もう、何もできず……
死んでいくのか……。
お爺さん……
お婆さん……
ごめん……
俺は……)
薄れる意識の中で、お爺さんとお婆さんの顔が
いつも笑顔で、優しく自分を育ててくれた二人。
いつか、彼らに恩返しをするのが舜太の夢でした。
立派な大人になって、彼らに大きな家を買ってあげて、美味しいご馳走をたらふく食べてもらって、一緒に、いつまでも幸せに暮らしてもらうのが、舜太の夢だったのです。
けれど、もう彼らはいません。
孝行したい時に、親は無し。
せめて、彼らの為に、何かしてやりたかった。
親のように慕っていた彼らの為に。
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作者名：milkssss | 作成日時：2020年7月12日 18時
