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でもあいつの恐ろしいところはもっと他にある
あいつはおいらたち人間をすぐに殺したりはしない
側に兵を置き、快適な暮らしを送るだけでなく、家畜を育てるように、大人たちは無理やり交配させられ、生まれた子供はちゃんと育てさせる
そうすることで、あいつは永遠にこの安全な都の中で楽に生きていけるんだ
それに比べておいらたちは、あいつに喰われるために生きていくしかない……
そんなの、もう死んでるも同然だ……
そして、月に一度、あいつは人間を一人喰らう……
それが今日だった……
きっとあの子供はもうあいつに食べられてしまっただろう……
もう、おいらはそんなの限界だった……
だからおいらは、それを止めたかったんだ……
あいつを殺せば、こんな恐怖におびえずに済む……
それに、おいらだけなんだ
ああやって都の外に出られるのは
昔からおいら、猿みたいに身軽でさ、時折ああやって外に出ては、何か使えそうな武器を持ったやつが通りはしないかと機会をうかがっていたんだ
そしてようやく見つけた
鬼を斬れるという刀を
軍隊でも敵わないのなら、もうおいらがやるしかない……
さっきはちょっと怖くて動けなくなっちまって、こんな様になっちゃったけど……
太智「だからお願いだ……。もう一度おいらにその刀を貸してくれ……！今度こそ、あいつを……！」
痛みに耐えながら起き上がった太智の脇腹の包帯が、みるみる赤くなっていくのが見えました。
けれど、その瞳はまっすぐに舜太を見つめています。
仁人「なるほど……。この都から漂う血の臭いはそういうことでしたか……。太智殿……話は分かりました……。けれどこれ以上動いてはなりません……。傷口がすでに開いてしまっている……」
太智「おいらのことは良い……！だけど、これ以上あいつにおびえて、死んだように生きて、おいらのお父やお母やこれまで喰われていった人たちみたいに、無駄な犠牲を出し続けるなんてもうたくさんだ！
もうこれ以上、あいつのせいで見ざる、聞かざる、言わざるになるなんて、おいら嫌なんだよ！！」
仁人「太智殿……」
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作者名：milkssss | 作成日時：2020年7月12日 18時
