M!LKで桃太郎其の壱 (ページ26)

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第三話ページ26

深い森の中、背に長物の槍を背負う青年と、腰に一口(ひとふり)の刀を携えた少年が歩いておった。
行く当てもなく、ただ彷徨っているのみでしたが、かれこれ一週間は目的のものに出会っていません。

仁人「この辺にも鬼はいないようですな。一体どこに……」

舜太「っていうか、いつまで付いてくるの？俺、あんたを家臣にした覚えなんてないんだけど……」

仁人「何を言っておられるのです舜太殿！私がいなければ舜太殿は今頃野垂れ死んでおいでなさったのですよ？」

舜太「……」

一週間前、とある村で出会ったこの仁人という男は、勝手に舜太の家臣になると宣言して、勝手についてきている、と、舜太の中でそういう認識でありました。
家臣などという堅苦しいのが嫌なのはもちろん、これまで碌(ろく)に人と関わってこなかった舜太にとって、他人と一緒に旅をするなど、少し窮屈に感じていたのかもしれません。
けれども仁人の言った通り、彼がいなければ、彼があの村で看病をしてくれていなければ、今頃死んでいたかもしれないのも事実。
どうしたものか、と舜太は頭を抱えるのでした。

舜太「ん？またこの看板だ……。一体誰なんだ？なんて書いてあるのか読めん……」

ふと視線を移した先、そこにはとある人物の人相書きが描かれた立て看板。
あまり字の読めない舜太にとって、一体何が書かれているのかは分かりませんが。

仁人「これは……」

舜太「ん？知ってるやつか？」

仁人「あ、いえ……。これは、盗賊のようですね……。最近このあたりによく出没すると、そう書かれております……」

舜太「盗賊……」

鬼に比べれば、人間の盗賊などおそるるに足りません。
それに、盗られるものなど何もない、そう思っていました。

「お兄さんたち、旅の人かい？」

するとその時でした。
どこからともなく声がします。
けれども、その声の正体がどこにいるのか皆目見当がつきません。

舜太「何だ？今声がしたような……」

「こっちだよこっち！」

仁人「声はすれども姿は見えず……。気を付けてくだされ舜太殿……！」

舜太は腰の刀に手を伸ばし、仁人は背中に引っ掛けた槍の柄を握りました。

「上だよ上！」

そう言われ、二人が顔を上げると、高い木の上に、誰かが座っているのが見えました。