M!LKで桃太郎其の壱 (ページ21)

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舜太は怒りました。
腰に携えた刀を抜き、鬼へ一直線。
もう鬼の殺し方はわかっています。
だから、出会いがしら、舜太は鬼の首を刎(は)ねました。
血しぶきを上げて鬼は絶命し、手に持っていた村人の死体と一緒に地面に崩れ落ちます。
更に物陰にももう一体の鬼。
両手で焼け焦げた村人の体を半分に引き千切りながら、その鬼は舜太の方へと歩み寄ってきます。

舜太「絶対に……絶対に許さん！！」

怒りに身を任せ、舜太はその鬼の首も見事に切り落とし、血の雨を浴びながら、刀を鞘へと納めました。
燃え盛る家々の間を抜け、舜太は生きている人がいやしないかと見て回ります。
けれでも、全て焼け死んだ死体ばかり。
女子供も関係ありません。
更に、焼け死んだばかりか、それらの肉は全て鬼に食い荒らされ、惨(むご)いものでした。
しかし、舜太は少し疑問にも思いました。
以前であった鬼は、ただ人を食らう獣のようなものだと思っていたのに、今回は、火を使い、家を焼き、人を殺しているのです。
火を使うなど、知性のかけらが見えるのです。
それになぜ火をわざわざ使ったのか。
舜太にはわからないことでしたが、理由は簡単です。
鬼たちは、この村の住人の多くが病に掛かっていると知っていたのです。
病の元である菌を殺すため、鬼は火を放ってから人間を食らったのでした。
しかし、舜太にはそんなことを知るすべはありません。
ただ鬼が人を殺した。
その事実さえわかれば、舜太にはそれで良いのです。
それが鬼を殺す、最大の理由になるのですから。

そして、舜太にはもう一つ気がかりがありました。
ひと悶着あったとはいえ、自分の命を救ってくれたあの男はどうしただろうか。
鬼に食われたか、はたまた逃げ延びたか。
やがて舜太の足は、仁人の小屋に辿り着ていました。
小屋は半分焼け落ち、今も黒い煙がもくもくと上がっています。
炭になった瓦礫を押しのけ、小屋に入り込むと、舜太の心臓が脈打ちました。
柱の下に血や煤(すす)にまみれた腕が見えたのです。
この光景に、あの日の事が今でも鮮明によみがえります。
柱の下敷きになっていたお婆さんの姿が。
けれども、ここで怯んでいる場合ではありません。
舜太は焼け焦げて黒くなった柱を持ち上げて放り投げました。
柱の下には、数人の村人を庇う様に、その上に覆いかぶさった仁人が倒れていました。