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夜
ハロウィンのイベントも終わり、各々が部屋へと戻っていく中、エミさんに声をかけられた。
「っ…Aさん、少しいいですか?」
「はい、勿論。」
「私の部屋に来てください。」
腕を引かれて、彼の部屋に誘われる。
こんな事をするなんて珍しい。
「はぁ……やっと二人っきりですね。」
部屋に入り、ドアを閉めた彼はそう呟く。
こっちへ、とエスコートされた先はバルコニー。外に出てみればひんやりとした風が頬をなぞった。
「どうでしたか、今日は?楽しかったですか?」
先生が生徒に問いかけるような口調の彼。
二人っきりになっても彼は私を子供扱いする。
「……楽しかったです。皆さんの仮装も素敵でしたし、私もこんな衣装、滅多に着れませんから。」
目をぼんやりと輝いている月に向ける。
満月には少し足りないが、半月とも言えない微妙な形。どっちつかずのその姿はとても滑稽だ。
「それは良かったです!私もとても楽しめました。」
頭をぽんと撫で、目を細める彼。
その動きがもどかしくて、つい彼の手を掴んでしまった。
「……?A、さん?」
「いつになったら………私はエミさんの生徒じゃなくなるんですか?」
「貴方はずっと私の生徒ですよ?」
「違うっ!」
私は声を荒らげた。叫び声が外に響き、近くの木の枝が少し揺れた。
「子供扱い……してほしくない。」
目を下に向け、わなわなと震える私。
きっと彼にはより子供っぽく見えてしまっているのだろう。
沈黙の時間が苦しくて、部屋を飛び出そうとすると、腕を掴まれた。
「待てや」
彼の口から出た言葉はいつもの優しい言葉ではなく、砕けた乱暴な言葉。
「はぁ…これでも気ぃ使っとったんやで?でも、ええか。」
腕を引かれ、彼に強く抱きしめられる。こんなことをされるのは初めてで、心臓がばくばくしている。
「大切に、大切にする予定やったんやけどなぁ……本人がそう言うなら仕方ないな」
くいっと顎を持ち上げ、しっかりと目が合う。彼の瞳にはいつもの暖かい優しさではなく、色っぽさ、妖美さが濃く出ている。
「仮装やなくてな、」
彼は煤汚れた私の仮装のスカートの端を持って言った。
「ほんまもんのドレス、着せたるからな。」
幽霊にならなくても、ウエディングドレスが着れそうです。
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私用でここ一週間忙しく、更新遅れてすいません!
今日から再開します!
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霞花(プロフ) - ひかりさん» オリジナルフラグは外れております。冒頭部分の注意書きもしっかり表示されていますよ (2020年5月10日 20時) (レス) id: 6d56430d02 (このIDを非表示/違反報告)
ひかり - オリジナルフラグをお外しください。ルール違反です。 (2020年3月24日 13時) (レス) id: 8c2e85674d (このIDを非表示/違反報告)
霞花(プロフ) - ブンブンさん» ありがとうございます!(蘇生) (2019年10月24日 18時) (レス) id: 8895aebc7a (このIDを非表示/違反報告)
ブンブン(プロフ) - 尊い…(遺言) (2019年10月21日 22時) (レス) id: 4a511d68cf (このIDを非表示/違反報告)
霞花(プロフ) - ラピさん» そう言って頂けるのは光栄です!ありがとうございますっ。 (2019年10月14日 22時) (レス) id: 356bccad88 (このIDを非表示/違反報告)
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