研磨くんと私。【HQ】【孤爪研磨】 (ページ21)

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１セット目ページ21

『…A、…A起きて、もう着くよ』

あと20分くらいで到着するとの黒尾からの声掛けで目が覚めた孤爪。
横で寝ているAの寝顔をこっそり撮ってから静かに起こす。
もちろん、繋がれた手はそのままの状態で。

「………んぁ、」

(…ん、なんだ？もう着くの…？)

『……おはよ。』

「…んぇ？……あ、あ、孤爪くん？おはよう！」

目が覚めて10秒としないうちから孤爪に笑われてしまうA。
寝起き過ぎて間抜けな声が出てしまった焦りと、
寝る前の孤爪の爆弾発言を思い出してじわじわと恥ずかしさが湧き出る。

(…一応、ね。確認だけ…。)

「…孤爪くん、さっき起きた時の事覚えてる……？」

『…？おれが起きた時ってこと？』

(…これは覚えてない感じかなー、)

「…っそうそう！覚えてないなら別にいいんだけどね？」

安堵の気持ちがどっとAに伸し掛る。
…黒尾が録画したものを孤爪に見せられたら終わりだが。
全力で阻止しよう。

「ごめんごめん、変な事聞いて…」

『…………覚えてるって言ったら？』

「…へ？」

さっきの安堵はどこへ行ったのやら。
Aの顔は紅に染まり、またもや間抜けな声が出てしまう。
孤爪の瞳がAを捉える。

(…覚えてるって、孤爪くんの意思で…ああやったって事…？)

『……おれさ、Aのこと好きなんだよね。』

『……だから練習試合の時、おれの事見ててよ。』

まだ薄暗い朝。
誰かの寝息も聞こえるようなバスの中で
いつも通り淡々と喋る孤爪。
Aのことが好きだと言った彼は
手を握る力を強める。

「………わ、かった、。」

そう一言だけ返事をして孤爪の瞳から逃れる。
こんな会話をしたあとでも自由人な彼は
繋がれた手をにぎにぎと握ったりして遊んでる。
孤爪のこういう所に救われると、とことん思ったAだった。

まるで何も無かったかのように会話が続く。
その会話は主将の声掛けによって途切れてしまったが、
とうとう待ちに待った練習試合が始まる。

「…烏野高校、だ。」

懐かしの烏野高校を目の前にして一瞬狼狽えるA。

会場校としてもう既に集まっていた烏野高校のバレー部の方々に
挨拶を済ました後、マネージャーの仕事として
水飲み場や場所確認をしに行く。

「…ふふ、楽しみだ！」

「…あれ、なんでこんなとこにいるの!?!?!?!?」

「うるさい山口……、え。」

聞き覚えのある声が響く。

振り向いた先にいたのは＿＿＿。