研磨くんと私。【HQ】【孤爪研磨】 (ページ20)

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五試合目ページ20

バスに揺られる中、なかなか起きない孤爪を見つめる。
この状態で寝れるはずもなくぼーっとして過ごす時間。
もうほとんどの部員が寝てしまって
静かになったバスは何故か居心地がよかった。

(…そういえば、眠い時の孤爪くんが面白いってどういう事だろう…)

バスの出発前から今までずーっと寝ている孤爪は
いつにもなく幼く見えてとても可愛い。
サラサラの髪の毛が肩にあたってくすぐったい。

『………ん、A…？』

(はっっっ…起きた…?!……起きた時のことを考えてなかったやばい…)

がっちり繋がれた手。
これを見て孤爪はどう思うのか。
拒絶された時にはもう立ち直れないだろうと覚悟を決めて声を掛ける。

「…お、おはよう。まだ時間かかるからもうちょっと寝てても…」

いいよ、という前に孤爪が行動を起こす。

繋がれた手を持ち上げて孤爪の頬に擦り付ける。

『…ん、ふふ…』

(…ん????????)

予想外すぎる孤爪の行動に驚きを隠せないA。
孤爪の可愛さに声が出てしまわないよう、空いてる手で口元を覆う。

『…この前くれた飴……おいしかったよ、』

「…そ、そ、そっか！よかった！」

普段の孤爪とは打って変わってふわりと笑っている孤爪を見て
あまりにも不自然すぎる返事をしてしまった。
まだ目が空いてなくてふわふわした喋り方な孤爪は
言葉で表せないような…別人のような雰囲気だった。

『……Aみたいな味がしたんだ、』

「ん、私みたいな味？」

『……そう、甘くて……』

甘くて、と言った後少し間があったため
寝てしまったかと思い孤爪の顔を覗く。

「…？孤爪く…」

『おれの、すっごく好きな味。』

そう言い放ったあと孤爪は眠ってしまった。
ぶわぁ、と自分の頬が赤くなるのがわかる。

その直後、録画を停止するあのお馴染みの音が鳴った。
音のなった方に振り向くとそこにはニヤニヤした黒尾がいた。

「いいもん撮れちゃった」

口パクでそう言ってくる黒尾に精一杯のやめてくださいを伝える。

黒尾と顔面での会話(？)を終えた後、背もたれに身を任す。

ふと自分の手元を見ると恋人繋ぎに握り変えされていた。

あー、好きだな。

誰にも届かない気持ちがAの胸の中でこだまする。

まだ着かないよね、と時間を確認したあと
Aも孤爪と同じように眠りについた。