[ハイキュー]弱くて強いやつ[男主] (ページ16)

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その十六、若利ページ16

「俺の知ってるAは、1度も諦めたことがない、強いやつだ」

若利の声が真上から僕にのしかかる

「たとえ絶望に陥っても、時間をかけてまた登ってくる、しぶとくて強いやつだ」

そんなわけないだろ
僕はいつも逃げてばかりだったじゃないか

「だがお前は、仲間を頼らない、一人で抱え込む弱いやつでもある」

何言ってんだよ…

「お前はもうわかっているはずだ、1人じゃないと、バレーがまたできると」

偉そうに、知ったような口を聞いて……

『出来るわけないだろ！！』

僕は立ち上がって、若利の胸ぐらを掴んだ

『あんなに好きだったのに…体が震えるんだ
やりたくないって拒否するんだ
呼吸が整わない、ひどく苦しいんだよ！そんな僕に、またバレーができるなんて無責任なこと言わないでよ！僕の気持ちなんて何もわからないくせに！』

ずっと黙っていた若利は、胸ぐらを掴む僕の手を握った

「わからないわけが無い」

『は？』

「俺がバレーをやって来て誰よりも隣にいたのはAだ。だからあの時、お前の苦しみを汲み取ってやれなかったことに今でも後悔している。」

後悔する必要なんてない
あれは若利のせいじゃないし、助けを求めなかったのはこの僕だ

「A、バレーは好きか？」

若利が唐突にそう尋ねた

「俺は、Aのバレーが好きだ」

体が震える、悲しいとか辛いとかそういう理由じゃない。いま僕は、死ぬほど嬉しくてたまらない…

『好きだよ、好きに決まってる
僕はバレーが、若利のバレーが大好きなんだから…きっと、ううん、この世の誰よりも…』

バレーは僕の呼吸
若利のバレーは僕の光

「俺は、この手がまた俺にトスを上げると信じてる。」

『…ふっ、若利にそう言われたらなぁ』

昔からこいつの信じてるって言葉に僕は弱い
だって、それが何よりの自信になるから
誰よりも強い若利がこんなにも弱い僕を信じて待っててくれる。
なら、それに応えたいじゃないか
強くなりたいじゃないか

『ありがとう、若利』