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「.....」


そのまま俺は眠りに落ちてしまい、
ふと目を覚ますと、心地の良い風が頬をかすめた。


体を起こし窓の方に視線を移すと、
Aという女が窓の縁に、
寄りかかるように手をついている。

外から吹いてくる風が、そいつの髪をなびかせた。



この女のことは、全く何も知らない。

だけどなぜか、そいつの横顔を見て思った。



....儚い。


今にも、風と共に、どこかへ散ってしまいそうだった。




「...外、なんかおもしれぇもんでもあんのか?」

俺は思わず、女に話しかける。


『....無いですよ、何も...』

話しかけられたことに驚いたのか、
女は一瞬固まった後、こちらを振り向いて答えた。



「.....」

また窓の外を眺め出すそいつを、
俺は黙って見つめる。


『....あ、土方さんもどうです?
 いくら一週間とは言え、一日一回くらいは、
 外の空気吸っとかないと..!』

女は微笑みながら、再び振り向いた。


「..俺ぁ外の空気なんかより、
 煙が吸いてんだがな...」


口ではそう言いながら俺は、
松葉杖をつき、そいつのベッドの横に立つ。


煙草吸われるんですね、
と言いながら、女は俺を見上げた。



気持ちの良い風を感じながら、
チラッと横目で、そいつを見下ろす。



...何考えてっか分かんねぇツラしてんなぁ。




「アンタ今...何考えてる?」

気付くとそう口にしていた。


『.....そうですねぇ...
 風が気持ちいいなぁ、とか
 外で走り回りたいなぁ、とか
 ...看護婦さん以外の人とこうして、
 並んで話すの久しぶりだなぁ、とか』


女は、俺からの唐突な問いに戸惑うどころか、
淡々とした様子で答える。


「....そうか」


『..プハっ....土方さん、面白い人ですね
 自分から聞いといて、それだけですか?』

俺の短すぎた返事に、女は軽く吹き出した。


「あ、いや....初対面だし、
 やっぱ聞き入るの悪ぃかと思って...」

後頭部を掻きながら、タジタジと言う俺。


『深く聞き返される覚悟でサラッと答えた私、
 めちゃくちゃ恥ずかしいじゃないですか..!』

そいつは、若干自嘲気味に笑いながらツッコんだ。




フワフワとした柔らかい表情もすれば、
とてつもなく切ない、儚い表情もする。
また、明るく楽しそうに笑う時もある。


そんな、表情のコロコロ変わるAという、
一人の女に、俺は興味を持っていた。


こいつがどんな人間なのか、知りたくなっていた。

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設定タグ:銀魂 , 土方十四郎   
作品ジャンル:アニメ
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リヴ - ていさん» 私も銀魂の小説書いてます!ていさんほど上手くないですが、ぜひちらっと見ていただけたら嬉しいです!! (2021年1月5日 11時) (レス) id: 3a05cdac75 (このIDを非表示/違反報告)
てい(プロフ) - リヴさん» 勿体ない程のお褒めの言葉ありがとうございます(TT)完結まで暖かく見守ってくださると嬉しいです!! (2021年1月5日 11時) (レス) id: 51fbc336c0 (このIDを非表示/違反報告)
リヴ - 語彙力が素晴らしいです!ていさんの作品色々読ませていただいたんですが、どれも面白くて…!尊敬してます!更新頑張ってください! (2021年1月5日 10時) (レス) id: 3a05cdac75 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:てい | 作成日時:2020年12月20日 6時

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