ヒトゴト ページ4
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〈Tadayoshi side〉
去年見た花火とは何かが違う気がしてた。
確かに綺麗で、派手で、
やのに、遠くて、他人事みたいに思える。
ぼんやりと眺めてるしかない。
丸「今年ももう文化祭終わってもうたぁ…」
安「もうあと一回しかないなぁ」
丸「えーほんまや！寂しい！」
安「でもあと一回ある！」
丸「ほんまや！嬉しい！」
渋「こいつアホなんか？」
花火を前にして
ヤスとキャッキャ楽しんでるマルを指さしながら、
すばる君が尋ねてくる。
意外と波長合うねんなそこ。
大「…はぁ…」
渋「お前なぁ、」
大「なに！？お説教！？嫌や聞きたくない！」
渋「何も言うてへんわ」
思わず出てしまった溜息に、自分で嫌になる。
いくらAのことで
気分が上がりきらないとはいえ、
友達にまで当てつけんのはさすがにやばい。
しかし、すばる君は「そうやなくて、」と
若干の呆れ顔で付け加えた。
渋「お前このままでほんまにええんか？」
大「え…？」
渋「そらお前がこれでええんやったら
俺は何も言わんけど」
大「…」
渋「…全然ええわけない、みたいな顔してるやんけ」
気だるげな、だけど真っ直ぐな光を通した瞳が、
こちらを捉える。
花火は上がり続ける。
…去年、Aと見た、
鮮やかで何よりも綺麗に映った花火。
あの花火が、また見れたら…。
大「…やっぱり、嫌や」
渋「…」
大「やっぱ、Aと一緒におりたい…っ！」
渋「…おう、」
すばる君の口角が、ちょっとだけ上がった。
安「…おーくらさんっ」
大「？」
安「ここだけの情報。Aちゃんと亮は、今…」
"3階の一番奥の教室におるよ"
ヤスがそう囁いて、にっこり笑う。
大「ありがとう…
…俺、行ってくる！」
スマホを取り出して、
Aへの通話ボタン躊躇なくタップしながら。
今いる校舎とは真反対の向こう側を目指して
誰もいない廊下を走り出す。
安「行ってらっしゃーい！！」
丸「あっ、ちょ、いつの間に！？」
渋「絶対間に合えよ、」
廊下に続く窓から、
少しずつ近づく花火が見えた。
.
渋「やっと行ったな」
丸「…俺も行こうかなー」
渋「あ？」
安「俺が全力で止めるで」
丸「何で俺はあかんの！？」
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作者名：黒葡萄
| 作成日時：2020年2月7日 16時
