次の夏は ページ22
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岩「ありがとね、送ってくれて」
「ううん、気をつけてね」
翌日の昼下がり。
今日の空はよく晴れていて、海面は凪いでいた。
暑すぎるくらいかもしれない。
荷物を持った照は、眉をふにゃりと下げて口角を上げる。
岩「また向こう着いたら連絡するね」
「うん！待ってる」
私にも分かるほどの愛おしそうな目で見つめてきて、優しく頭をぽんぽん、と撫でる。
…まだ時間があるから、と2人並んで腰掛けた。
「次、いつ会えるかな…」
岩「ん〜…できればたくさん帰ってきたいけど…やっぱり年末になるかな」
「そうだよね、」
岩「あ、でも！予定合う日あればどっか出かけようよ、Aがこっちに来てくれるでもいいし、全然違う場所行くのも楽しそう」
「あ〜良いねぇ」
ルンルンで行きたい場所を考える照を見て、私も自然と笑顔になる。
岩「自由に予定組めるのも大学生のうちだけだしさ、行けるだけ色んなとこ行こう」
「確かに…私ももう就活始まっちゃうし、来年はもう4年かぁ」
岩「A、こっちで就職でしょ？」
「うん」
岩「……就職しても、ちゃんと1年待っててね」
「なにそれ、笑」
岩「だって社会人になったら、また新しい人達とも出会うじゃん、」
「それが…嫌なの？」
岩「嫌っていうか……うーん……心配なだけ…」
「顔に嫌だってハッキリ書いてあるよ」
岩「Aがちゃんと待っててくれたら、俺も早くこっちに戻るから」
「卒業の時期は決まってるでしょ、笑」
岩「それでも、早く就職先決められるように頑張って、1日でも早くAの近くに行きたいの。」
「はいはい、分かったから、笑」
岩「笑い事じゃねぇから。ねぇ、ほんとに約束だからね？」
「うん…わかった。待ってるよ」
岩「…うん、」
満足そうに目尻を緩めてとろんと笑う照との約束は、舫のロープのようだった。
こんな風に先の未来を誰かと見据えるなんて、
そのために今を繋ぎ止めておくなんて、
私には……
「……来年は、翔太帰ってくるかな、」
岩「…」
不自然な台詞ではなかったと思う。
だって私達は、初めから3人でいたから。
でも、
岩「……いや、帰ってこないんじゃない？」
照が持ってたスマホを画面を伏せるようにして置いた、その中に。
どんな内容があったのか、きっと私は、見ることはないんだろう。
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作者名：黒葡萄
| 作成日時：2025年8月12日 15時
