キスフレンド【櫻井孝宏】

Story_19 ページ19

***


「はぁ、はぁ...っ」


走って外に出た私は呼吸を整える
...次会った時怒られそう、でももういいや


「明日は......休み、か
久しぶりにジムでも行こうかな...」


身体を動かせば考えなくて済む
早く帰ろうと歩き始めた途端、強く腕を引っ張られた


「っ！？」


建物の物陰に引きずり込まれ壁に押し付けられる
不審者だと思い声を上げようとしたとき


櫻「随分久しぶりだね」


「なっ...」


聞き覚えのある声で囁かれた
マスクを外したその人は紛れもなく櫻井さんで


櫻「ライブ終わりで疲れてるだろうけど
このまま俺の家きてもらうから」


そう言って腕を掴むと車に向かって歩き始めた
今更...何なのっ......


「離してください！！」


櫻「......」


「いきなり何なんですか！？
ちょ...櫻井さん！！」


櫻「...うるさい
これ以上騒ぐならここでキスするよ」


ピタリと足を止め振り返った櫻井さんは
本気でする気なのか腕を引き寄せ頬に手を添えた

ここでしたら...誰に見られるかわからない


「っ...」


櫻「ん、いい子」


私は何も言い返すことができずそのまま車に乗った

家に向かう途中、一言も会話をすることもなく
櫻井さんと目が合うこともなかった


櫻「...はい」


「......お邪魔します」


先に家の中へ入るよう促され渋々足を踏み入れる
靴を脱ごうとした瞬間、後ろから強く抱きしめられた


「ちょ...！」


櫻「......ごめん」


「え...？」


突然謝られ頭が追い付かない
櫻井さんは一度離れ正面を向かせて再び抱きしめた

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