うちのマネージャーは、仕事ができる。【後編】

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一週間後に顔合わせに本読みがある。
この恋心に似た、役柄を勝ち取ることができた俺はなんてラッキーボーイなんだろう。



ミツさんの隣の部屋に引っ越しできることになった。
親に保証人を頼んだのは、息子として情けないが、すぐに恩返しをできると不思議と自信はある。
だって俺にはミツさんがいるから。



ミツさんが藤ヶ谷さんと現場に行く姿を見るのは悔しい。だから、早くその立ち位置を奪いたい。
後部座席のドアを開けて、事務所の自動ドアを過ぎる。後ろ髪を引かれる思いを抑え、振り返ることはしなかった。


だって、振り返っても藤ヶ谷さんが買った車しか見えない。悔しいじゃん。
スモークガラスになってるし。



俺に振り返る暇なんてない。



顔合わせで全てのキャストが公開となる。
それまで、誰が出演するかも極秘となっているらしい。



とにかく皆ベテランに決まってる。
迷惑をかけて、ミツさんの顔に泥を塗らぬように、俺は俺が出せる力の限り、レッスンや稽古をこなすだけだ。



渡された台本。
書き込み方法とかを先生に教えてもらう。
時代背景が今と違うから、知らない単語とか読めない漢字も多くて、振り仮名をつけるところから習った。




こんなことなら学生時代もっと勉強しときゃよかった。



限られた時間、出遅れたくなくて、焦りだけが募る。
こんなにもセリフを覚えるのが難しいなんて。
演者の頭の中はいったいどうなってんだ。




「う〜」
「可愛く唸ってもダメよ。」



厳しい先生の、眼鏡のフレームがキラリと圧を浴びせてくる。




でも、ミツさんが迎えに来てくれる。
ミツさんの家にお邪魔させてもらおうかな。
目標があれば、この辛さも何とか…！




「殿下、御婚約おめでとうございます」



愛する人が他の人のパートナーになる辛さをひた隠しにして、婚約者の皇女に嫌がらせをされるのも我慢して。


祝いの言葉を捧げる。
騎士として、当然のことだった。
皇太子は、当たり前のように「ああ。」と答える。



なぜなら、皇太子も騎士を愛していたから。
祝われたことに、彼も傷ついていたのだ。



……結末まで目を通して、驚いた内容だった。
実は今よりも、昔、古代の方が、こうした同性愛はポピュラーだったそうだ。
絶対君主の王様が、家臣である若い男を愛人にするということは、珍しくないことらしい。
こうした話に巡り合わなければ、一生知り得ないことだった。



自分がミツさんを慕うのも、間違っていないと思えた。

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