流星群の奇跡【後編】

85 F ページ36

素直な北山も好きだけど…こっちもやっぱりいいな。



「に、ニカに騙されてんだよ！ガヤ！」


んん？
もうなんなんだろう、この人。
ガヤ呼びは保ててるとして、もうニカって言ってるし。
いや、今君がニカなんだよね？もし騙されたと仮定するなら。



「お、俺は二階堂だし！み、ミツに聞いたこと伝えただけだし！」



失態にも気付かず、ちぐはぐになりながら続ける北山が愛しくてかわいくてどうすればいいんだろう。



ここは、俺も素直になってみようかな。
ニカから聞いた……
俺がおまえを悩ませてしまったかもしれないと


贖罪。
恥ずかしいけど、また清水の舞台から飛び降りるわ。




「そんな有り得ないようなこと信じる奴じゃねえよな？！ガヤは！」



困った時に、続ける癖。
それを、止めさせることができるのは



「信じるよ。だって、俺は北山を愛してるから」



俺の特権だよな？
ソファに座ったまま、少し離れた北山を見上げる。
見つめると、北山は口を閉じた後、僅かに開けた。
そして、すぐに目を逸らした。
への字口にしちゃって。



その不貞腐れたと見える顔は、照れ隠しなんだよね？




「三週間前ぐらいからかな、今まで何とも思ってなかったニカが突然気になり出した。」


思い返すように、この不思議な体験を話し始めた。




「北山とニカと食事に行ったよね？あの時、ほんの少しでも北山に嫉妬してほしくて、わざとニカの方に寄って座ったの。
覚えてるかな？あん時さ肘がぶつかると、ぱっと照れたような顔をして肘を離したのお前。
それがなんだか北山に重なってさ。北山は目の前に居るのに。そんなお前の顔が見たくて、何度も肘を、宛てた。どうしようもなく可愛く見えてさ。意味分かるだろ？」



そうだ……あの日、
ニカからは北山の匂いがして北山からはニカの匂いがして、すごく嫌だったんだ。
それは、北山を想っての嫉妬だった。
でも、その夜はニカを想って、小さな嫉妬もした。
よく分からなかったけど、今なら納得できる。



「……意味、わかんない」


ぷいっと踵を返す北山。
立ち上がると、俺は躊躇うことなくその背中を抱きしめた。


何度も撮影で抱きしめた体じゃない。
演出で絡んだ体じゃない。
抱きたいと希った体じゃない。


匂いも、違う。



「じゃあ分かりやすく言ってあげる。俺がニカを映画に誘ったのも、ゴミを回収してる姿に心掴まれたのも、全部それが北山だったからだよ」



でも、間違いなく北山だった。

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