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「いってぇっ!」
「俺の心のが痛いわ!」
飛び蹴りは見事命中し、藤ヶ谷は反応よく膝から床に座り込んだ。
上半身裸な俺に、シャツのボタンがはまっていない藤ヶ谷。状況証拠は揃ってる。
ふつふつと沸く嫉妬心に般若の血相だと思う。
「え、も、も、もしかして北山?!」
「そーだよ!バカ」
俺がこっちの世界の北山だと分かり、察したのか蹲りながらもチラッとこっちに視線を向けては驚いてる。浮気がバレて呆然としてる彼氏か。
「無事で良かったー♡♡」
ハートなんか飛ばして蹲りながらも膝をつき俺の両脚を抱きしめてくる藤ヶ谷に、怒りは収まらないが、嬉しくなる。
やっぱり、好きだ。
「向こうの俺だって、ちゃんと気付いた?」
「も、も、ちろん」
動揺して、わたわたしてる。
最初、絶対気付かず手を出したんだろう。
「……抱いたよな?」
俺だけど俺じゃない。
一番気になることだった。
戻ってこれた安堵と、向こうの世界の三人の心配より先に嫉妬心が勝るなんて、俺もまだまだガキだな。
「抱いてないよ。これは本当。北山だけど、北山じゃないから。」
見上げた藤ヶ谷の瞳の奥は真っ直ぐで真実を映していた。何年一緒に居ると思ってんだよ。顔を見れば、嘘か本当かなんて分かる。
「……じゃあ、俺なんで脱いでんの?」
「汗かいて魘されてたから。脱がしただけだって。」
うーん、その言い訳は何か腑に落ちないけど、
じーっと見据えると余計にワタワタする藤ヶ谷。
「何もしてないって!マジで!でも北山不足で。見た目は全く同じだから、鑑賞用に、ちょっと……」
白状した恋人に、はぁっと溜息を吐く。
なに、鑑賞用って。
「……でも、魘されてたのは、本当。きたやま、藤ヶ谷…って俺の名前呼んでた、ごめんって。」
「……」
「俺だけど俺じゃない奴を求めて、魘されてた。」
「……そっか。」
「……全く触れさせてくれなかったよ。泣きそうな瞳でずっと俺に接していた。優しくされると辛くなるって言って。ワケは教えてくれなかったけど。」
「……強情だな、俺も。」
「あっちの世界で俺たちは別れてる、んだよね?」
それだけは、聞いたって。藤ヶ谷は泣きそうな瞳と声で呟いた。
あっちの世界では、藤ヶ谷と距離を置いて詰めないように努力して、嫌われ者に自らなった俺。
にもかかわらず何故か時空を超えて、別れたはずの恋人が優しく接してくる。
想像するだけで、情緒が不安定になりそうだ。
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まいまい(プロフ) - 無事に還ってこれましたね…でも別れている世界線の2人がまだ結ばれてない!!どうかどうかそっちの2人とYさんのこともよろしくお願いします!! (2021年6月9日 11時) (レス) id: d8ffbdef31 (このIDを非表示/違反報告)
ももは(プロフ) - 1632さん» 1632さんっ!いつもありがとうございます!もうすぐ他の長編が完結するので、こちらも執筆始めます…!長らく更新せず、遅くなってしまい申し訳ございません(;▽;)本当にいつもありがとうございます!感謝でいっぱいです! (2019年10月6日 11時) (レス) id: db5af09c34 (このIDを非表示/違反報告)
1632(プロフ) - こんにちは、北山くん戻れてよかったです!もうひとつの世界の北山くんも幸せになれたかすごく気になります(><)続き楽しみにしております! (2019年10月3日 21時) (レス) id: a09880b79d (このIDを非表示/違反報告)
ももは(プロフ) - 魚さん» 魚さまっー!わわー!今作もご覧頂き本当にありがとうございます…!嬉しすぎます(;▽;)いつもありがとうございます!はい!飛び蹴りくらっちゃう恋人のFさん、書いてて楽しかったです!更新またしたいと思いますー!違う北山くん目線、少し不安ですが〜!書きます☆ (2019年9月4日 21時) (レス) id: db5af09c34 (このIDを非表示/違反報告)
魚(プロフ) - 飛び蹴りを食らっちゃう藤ヶ谷さん可愛くて思わず笑ってしまいました!笑 元の世界の北山くんに出会えて何より嬉しいですよね〜(*^^*)! お仕事大変そうですが、お体大切にしてくださいね。゚(゚^ω^゚)゚。!更新また楽しみにしてます〜! (2019年9月2日 1時) (レス) id: cc0d16b1ad (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ももは | 作成日時:2019年8月15日 22時