迷走＊ワールド

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△年○月7日(木)

収録後、聞いてしまった。
ドアの向こうで横尾さんが宮っちに吐露していたのを。
辛い、と。
宮っちは、慰めていた。
何が辛いのかは、聞き取れなかった。
でも、ふじがやの名前が聞こえた。



△年○月11日(月)

今日はリハだった。
ふじがやと横尾さんは似たようなメガネをかけて笑っていた。お似合いだなって正直悔しくなった。
宮っちがそんな二人を嬉しそうに見詰めていた。
なんだが、違和感を覚えた。



△年○月26日(火)

今日は7人での撮影だった。
ふじがやと話してると、視線を感じた。
視線の方へと振り向くと、横尾さんと目が合った。
横尾さんは、驚いた表情を誤魔化すように笑った気がした。胸騒ぎがした。



△年✕月6日(金)

今日は歌番組の生放送だった。
番組の後、宮っちをラーメンに誘おうと思ったが、中々楽屋に戻ってこなかった。
だから、探しに行った。
探しになんて、行かなきゃ良かった。
横尾さんが、藤ヶ谷を好きで苦しいと宮っちに話していたのを盗み聞きしてしまった。



△年✕月16日(月)


知らなかった頃には戻れない。
今まで、苦しめててごめん。
気付けなくてごめん。



△年✕月19日(木)


偶然、高校の後輩がマイコ役だった。
だから、お願いをした。
ふじがや、ごめん。
世界で一番好きだよ。




〇年△月8日(水)


横尾さんが毎日明るく、楽しそうだ。
隣で藤ヶ谷も笑ってる。
これで、良かったんだと改めて思った。
それでも、冷たいふりをするのは正直堪えるけど
思い出があれば、大丈夫。




────



俺は、自分の世界で日記をつけていた。
毎日、2.3行だったけど。
仕事のこととか、会った人のこととか忘れないようにするためにメモのようにつけていた。


もしかしたら、こっちの世界の俺もつけているかもしれないと、引き出しを開ければ、赤いカバーのダイアリーが入っていた。



ペラペラと捲っていく
別れたあたりの3年前を遡って捲っていった。
何でもない内容ばかりだった。
でも、ふと目に止まる。



「……嘘だろ、」



それは、裏付ける内容だった。
横尾さんが言っていたことと藤ヶ谷が言っていたことのピースがハマった気がした。



マイコ役の後輩の名前さえ書いていない。
この日記には、女の名前など一切出てこない。
メンバーやスタッフさん、家族だったり友達だったりは出てくる。



でも、圧倒的な登場回数。



□年＊月17日(火)

藤ヶ谷の髪型が変わっていた。うん、似合う！



─ 藤ヶ谷だった。

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