●《生け贄》狼鬼 ページ27
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(……血の匂い……？)
人里離れた山に漂う嗅ぎ慣れない血の匂いに、狼鬼は目を覚ました。
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「ちっ、Aを祠まで届けねば儂らに罰があたるというのに！」
「くそっ、山犬め。くたばれ！」
神楽装束の少女を連れた村人たちを、山犬の群れが喉を鳴らして取り囲んでいた。
杖や松明で追い払おうとするが、血に飢えた山犬はまったく怯む様子がない。
「いてぇ！こいつ、俺の腕を噛みやがった！」
「畜生！これでは俺たちまで喰われるぞ。」
男の腕からぽたぽたと垂れる血が地面に染みをつくる。
その匂いがいっそう山犬の飢えを掻き立てた。
「きゃっ！」
「Aが噛まれた！？」
「生け贄の血が……下界で流れてしもうた……！」
「も、もうおしまいじゃ…っ…！」
Aと呼ばれた少女が山犬に噛まれたと分かると、少女を守っていたはずの男たちは血相を変えて逃げ出した。
慌てて山を下ろうとする男たちの前に、ぬらりと立ち塞がる大きな黒い異形。
「なっ、なんだおめぇ！？」
「貴様ら、あの幼子を見殺しにするのか？」
「し、仕方ねぇだろ！生け贄が血を流すのは禁忌……！もうダメなんだよ！」
「……ならば、貴様たちは山犬も同然。下衆は消えるがよい。」
そう呟いた狼鬼は三日月剣で山犬ともども村人を斬り捨る。
運よく免れた一匹の山犬が情けなく喉を鳴らしながら尻尾を巻いて逃げ出した。
血の海の中で呆然とする少女が、目の前に立つ異形を見上げる。
「……あなたがこの山の神さま……？」
「俺は神などと大それたモノではない。ただの鬼だ。」
「お、に……」
「そなたは生け贄にされたのだな。」
「……うん。」
こくりと頷く少女の前に、狼鬼は膝をついた。
「……人間の子よ、俺についてくるか？
生け贄にされては、もう帰る場所もなかろう。」
「……うん。」
涙をいっぱいに溜めた瞳でまっすぐ狼鬼を見つめ、Aは首を縦に振る。
「よかろう。」
すっかり日が落ちた山道に、金色の瞳が妖しく煌めいた。
「今日からお前は、俺のものだ。」
──これは狼鬼が、封印される前の記憶……。
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くっきーー(ﾟﾚ゜)(プロフ) - 幽々華さん» お返事が遅くなりまして申し訳ありません！リクエストありがとうございます！第10章にて続編を書きますので、ぜひお待ちいただけたらと思います(^^) (2021年12月17日 0時) (
レス) id: d79e2b38c6 (このIDを非表示/違反報告)
幽々華(プロフ) - 別の機会にでも剣崎君メインの「嘘色の祝福」後日談が見てみたい…… (2021年5月29日 2時) (レス) id: 1e7a7481f9 (このIDを非表示/違反報告)
くっきーー(ﾟﾚ゜)(プロフ) - 里香さん» ご感想ありがとうございます！強がる賢人と包み込む夢主ちゃん、という対比を意識したのでそう言って頂けて嬉しいです(*^^*)オチの芽依ちゃん私も好きです♪笑 またよろしくお願いします！！ (2021年1月10日 22時) (レス) id: 518184db7c (このIDを非表示/違反報告)
くっきーー(ﾟﾚ゜)(プロフ) - あずきさん» お返事遅くなりまして申し訳ありません。明けましておめでとうございます♪不破さんがツン担当してるのも良いですよね！嬉しいコメントありがとうございます。また今年もよろしくお願いします(^^) (2021年1月10日 22時) (レス) id: 518184db7c (このIDを非表示/違反報告)
里香(プロフ) - 賢人くんのお話、ありがとうございました。夢主ちゃんと賢人くんの関係性、最高でした。一番最後の芽依ちゃんも可愛かったです。 (2021年1月10日 21時) (携帯から) (レス) id: a371ba2978 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：くっきーー(ﾟﾚ゜) | 作成日時：2020年12月19日 20時
