Assortment of sweets (ページ33)

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出会いは喫煙所 S.Moriyama_01 ページ33

ここは劇場の中でも奥の方にある喫煙所だから普段はほとんど人が来ない。
私にとってはそれが心地よくて大体ここに吸いにくる。

仕事で怒られてムカついて吸うのも大きな舞台がひと段落して吸うのもやっぱりここじゃなきゃダメだ。

仕事をしていて同僚と仲が悪いわけでもないし飲みに誘われたらできるだけ行っている。

でも人付き合いが得意なわけではないのでニコニコしていてもどこかでその場を楽しめていない自分がいた。

人に囲まれているのに自分は独りだと感じることもあった。

自分の本当に理解してくれる人はいるんだろうか__。

そんなことを考えてバカらしく思ってふっと笑いながら自分のふかす煙の伸びる先を見ると
喫煙所の扉から大きなガタイのいい男性が入ってきていた。

「お、お疲れ様です...」

まさかここに来る人がいるなんて思わなかったので慌ててその男性に挨拶する。

『お疲れさまっす』

私がいることには何も気にしていない様子で挨拶を返してくれた。

確かこの人は...盛山さんだったっけか。

舞台では大きな声でツッコミをしているかと思ったら
楽屋では後輩に変ないたずらを仕掛けて笑っている姿を何回か見たことがある。

私と違って色んな人に囲まれて明るくて楽しそうな人。

私から見た盛山さんはそんな印象だった。

だからこんなところに吸いに来るイメージがなかった。

『よく来るんすか、ここ』

急に彼に訊ねられる。

「えっ...ああ...まあそうですね...、笑」

話しかけられたことにびっくりしておどおどしてしまった気がする。

『初めてここまで来たからこんなところがあるなんて知らんかったなー』

そう呟いて彼はタバコの煙を吸い込んで吐き出す。
その横顔がどこか男らしくて不意にドキッとした。

「...ここあまり人来ないで一人で吸うのにはもってこいですよ」

そんな気持ちがバレたくなくてつい言葉を返す。

『そうなんすか...！それやったらゆっくり吸えていいですね』

確かに、なんて言いながらお互いに笑い合う。
久しぶりだなこの感覚。
何も考えずリラックスして話せてる。

『なんかこんな話しやすい方やったんですね』

「え？」

『いや、なんかあまり笑ってるのを見たことなかったんで』

えっ。私のこと知っていたの？

そんな風に聞こうと思ったら時計を見てあっやばと言って急いでタバコの煙を消す盛山さん。

『すんません、もうすぐ出番なんで行きますわ』

そして足早に出て行った。