4 お尋ね者 ページ5
・
・
「イライさんっ…まっ……て！」
「じっとしてA。火傷が残ったら大変だ。」
イライはAに半分またがるような体勢でいた。
「ここがエミリーさんの部屋で良かった。」
イライはホッと息を吐き、エミリーが着せてくれたであろう丈が長めのネグリジェに手をかけた。
「待ってイライさん！恥ずかしい…です！自分でやります！」
思わぬ羞恥と、さっき起きた出来事の恐怖で思わず声が大きくなる。
身体の震えが止まらない。
ベッドの脇には「刃物」が落ちており、嫌でも視界の端にギラギラと光っている
医務室にこんな立派な刃物が置いているとは考えづらいし、何より密室なのにどこから飛んできたのだろうか
『故意に』『何者かが』私とイライさんを狙っていたとしか考えられない。
・
・
「少し、赤くなってる。」
思考を現実に戻し、下を向くと既に手当が行われていた
イライは用意してあった濡れた布をAの太ももに当てがい患部を冷やす
そして、めくれたネグリジェをそっと直し、じっと私のことを見つめる。
「怖かったね…。でも、君が大きな怪我をしなくてよかったよ。」
どこか優しさと警戒心が入り交じったような微笑みだった。
・
・
・
ドタドタと階段を駆け上がる音がし、私とイライさんは驚いてドアの方を向く。
「すごい音が聞こえたから……。って、2人ともどうしたの！？」
エミリーはAの脚と、イライの手の甲に滲む血を交互に見て酷く狼狽する
「…とりあえず話は、そこの女の身元を確認してからだよな？」
ドアにもたれかかり腕を組んでいる「フードを被った男」が獲物を威嚇するかのように私を睨みつける
「……ナワーブ。彼女は今混乱しているんだ。言動に気をつけたほうがいい」
イライはナワーブをなだめるようで、言葉の端々にはふつふつとした不快感が載っている
「とりあえず広間に皆集まってるから、話はそこでいいだろ。こんな真夜中だし、さっさと済ましちまおうぜ」
ナワーブと呼ばれていた男が、返事を促すよう再度私を一瞥する。
「…わかりました。すぐ、行きます。」
掠れた声で返答した。
・
・
『あなたは誰から命を狙われてるの？』
『味方はこの館にいるかしら？』
ｰｰｰｰ夢で聞いたあの声が私の耳元でささやく。
漠然とした不安が私を支配する
きっとこれは、何かの「罰ゲーム」なのだろうか。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 997人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「第五人格」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ちび(プロフ) - 続きが気になります (1月8日 8時) (
レス) @page45 id: 8dd546cbdc (このIDを非表示/違反報告)
おかさん(プロフ) - 今更ではありますが、更新、楽しみに待ってます… (2022年10月20日 5時) (レス) id: 48fcbe9d4c (このIDを非表示/違反報告)
めぐ(プロフ) - アリスさん» 作者さんでもないのに横からすいません。その文を見た時にドキッとしてしまいました...確かに私たちが楽しんで読み進めれば主人公はその分酷い目にあう。そんな発想はなかったのでまた違う面白さが見えてきました！ありがとうございます (2019年12月14日 0時) (レス) id: 31f2218efb (このIDを非表示/違反報告)
アリス - 初コメ失礼します。個人の感想ですが、何かこの作品を読んでいると犯人は私たち読者？と思いました。主人公は刺激を求めて、私たちはドキドキを求めるみたいな。この作品は私たちが楽しめば楽しむ分だけ主人公に色々な出来事が起こると思いました。変な文ですみません。 (2019年9月25日 2時) (レス) id: cf8111877c (このIDを非表示/違反報告)
桃雪 - すごい面白いです.......！ナワーブくんもイライ君も皆、かっこいいです...更新、楽しみにしてます！ (2019年8月21日 16時) (レス) id: 8a17dfcf71 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ぽむちゃん | 作成日時：2019年7月4日 19時
