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「甘露寺との稽古は終わったのか」
伊黒様がひょっこりと顔を出した。目を少し見開いているため、おそらく驚いているのだろう。稽古していると思って来たのかもしれない。
「誕生日祝いのお礼にお菓子を見繕ってくる、と言ってくださりました」
「甘露寺は優しいな……」
「早く結婚してください」
「貴様隠さないようになってきたな。……俺に言っても仕方ないだろう。大切なのは甘露寺の気持ちと、……平和な世の中と……」
「……早く殺したいですね」
伊黒様は何も言わない。肯定の沈黙だった。
「俺は蜂蜜を差し上げたのですが、伊黒様は何を送ったのですか?」
「髪止めだ。そろそろ壊れそうと言っていたからな」
つまり、さっきの蜜璃様は伊黒様が渡した髪止めをしていた可能性が高いと。へえ……ふうん……そうなんだ……。
最高じゃん!!!!
*
蜜璃様が買ってくださった羊羮を食す。滑らかな舌触りと仄かな甘味、飽きさせない酸味がとても美味しい。蜜璃様は色々な菓子を買ってきてくださった。
せめて俺の分だけでも支払おうとしたのだが力に勝てず、伊黒様にも『好意を無下にするな』と言われたので大人しく縁側に座ってお二人を眺めている。
星空。普段は見るとこがない、美しい景色。きらきらと輝きを散らす。澄んだ光は心も浄化するようで、思わず感嘆の声がもれた。
「とっても綺麗ね、伊黒さん」
「甘露寺の方が綺麗だ」
「も、もう伊黒さんったら!」
今の声音的に、伊黒様はうっかり口走ったな。照れる蜜璃様の横で俺の方に目線を寄越している。救援信号かな……。手を添え、口を開く。
「お二人も、こちらに来たらいかがですか? まだ菓子はありますよ」
「あぁ、そうさせてもらおう」
「そうね」
合ってたらしい。伊黒様が俺の隣に座り、さらにその隣に蜜璃様が座る。うむ、これぞ理想の並びだ。蜜璃様の頬はまだ少し赤い。伊黒様は平然としているように見えるが……伊黒様、爪楊枝が上下逆ですよ……。
最後の菓子を飲み込んだので、短冊を取り出す。ええと、『お二人が幸せになりますように』、と。
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紅葉蓮(プロフ) - ゆうさん» ありがとうございます!!あと少しで一旦完結の予定ですので、頑張ります! (2020年6月14日 19時) (レス) id: e2cb5510b9 (このIDを非表示/違反報告)
二嘉 - いいなコレ。気にいったぜ☆ (2020年6月3日 18時) (レス) id: 5a89568ca4 (このIDを非表示/違反報告)
ゆう(プロフ) - めちゃくちゃ面白かったです!続き読みたいです! (2020年4月27日 21時) (レス) id: 7f11035070 (このIDを非表示/違反報告)
ソーダ - うむ。面白い!よもやよもや! (2020年3月4日 8時) (レス) id: 4b674ab2ae (このIDを非表示/違反報告)
紅葉蓮(プロフ) - 紫呉さん» いやほんとそれですよね…! (2020年2月25日 10時) (レス) id: e2cb5510b9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:紅葉蓮 | 作成日時:2019年11月25日 11時