5 ページ5
それ以来ことあるごとにAに話しかけてくるようになり、第一番隊が訓練をしている最中に遊びに来る回数も増えた。
どうやら恋愛的な意味で好かれているらしい、とにAが気づくのにそう時間はかからなかった。
しかしAの脳裏に焼き付いて離れないのは、戦うことを遊びの一種のようにこなす戦闘狂のようなシャオロンの姿だった。
シャオロンにしどろもどろに様子で話しかけられるたび、彼の本性はそれではないかと思って萎縮してしまうのだ。
想われていて悪い気はしないが、いかんせんシャオロンが怖い。
この人の想いを受け入れる気持ちは、ない。
───そしてゲリラ豪雨から帰ってきた現在。
『……いつ告白されても、断る準備はできてるのに』
兵舎の簡素な自室で水滴をすべて拭きとるのを諦め、ぼすっと布団に体を沈み込ませる。
拭ききれなかった水気がシーツに染み込むのもAは気にしなかった。
いつも告白を邪魔をされるシャオロンと同じく、Aもまた告白を断る邪魔を受けている。
いっそ好きな人ができたという嘘でもつこうかと考えはしたが、シャオロンがどういう反応を示すか分からないし、相手を殺すと言い出すかもしれない。
それに、そもそも嘘をつくのは基本的に好きじゃない。それが、どんな嘘だとしても。
『……ままならないなぁ』
Aはそのまま目を閉じた。
Aはある日、シャオロンを自分からショッピングに誘うことにした。
これまでシャオロンのお誘いは何度も受けてきたが、自分から誘うのは初めてだ。
sya「へ、へぇー。ここがあの最近できたっていうショッピングモール……」
『はい。ここの屋上から見える展望台って素敵なんです』
目に見えてぎくしゃくするシャオロンを横目に、Aはこれからの展開を暗い影が差した瞳で考える。
Aはみずからシャオロンが告白するのをうながし、それを断る作戦に決めた。
毎度毎度、告白のために呼び出されるこちらの気分にもなってもらいたい。
Aの脳裏にバーサーカーと化したシャオロンを思い出す。
『(いつかあんな感じに感情が爆発するんじゃないかって考えると……)』
怖い。
Aにとってシャオロンはいつでも誰かと進んで内ゲバをしている、どこに地雷があるかも分からない未知の存在だった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 332人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
詩音(プロフ) - 完結おめでとうございます！ (2022年9月18日 8時) (
レス) @page24 id: 44cf22d412 (このIDを非表示/違反報告)
インク - 面白かったです！完結おめでとうございます！ (2022年9月17日 19時) (レス) @page24 id: a2f12395c4 (このIDを非表示/違反報告)
詩音(プロフ) - めっちゃ好きです…。これからも更新頑張ってください！ (2022年9月4日 19時) (レス) @page10 id: 44cf22d412 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：REO | 作成日時：2022年9月4日 18時
