俺らまだ原石 garnet 【1】 (ページ45)

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「呼吸」ページ45

※いじめ描写あり苦手な方、お控えを
病系ほぼなしです

Side Taiga

あぁ、学校がこんな場に
なってしまったのはいつからだろうか。

「金持ってんだろー！だーせーよー！」

「おい、誰かに言ったらわかってんだろうな。」

「お前のだーい好きな父ちゃん、母ちゃん、弟くんに被害が出るんだからな。」

そう言って壁に背中を叩きつけられる。

あぁそうだ。

金は持ってる。

あぁそうだ。

母さんだって、
父さんだって、
北斗だって、みんな大好きだ。

ただ、それが俺を
”いじめ”の標的にする理由だろうか。

父親は社長で、この辺じゃ有名なくらい大きな家に住んでいる。だけど、家のことは1回も話したことないし、自慢もしたことない。

家族の写真をスマホのホーム画面にしてるけど、
そんなのやってる人だって多いだろう。

苦しい。

息を吸うのって、息を吐くのって、
こんなに難しかっただろうか。

あんなに大好きだった学校が、
ただ真っ暗な巨大な城のようにみえる。

ここは俗に言う、お坊ちゃん高校。
みんな大金を払ってこの高校に通っている。
偏差値だってそこそこ高い。

だからあいつらだって、
その辺の人に比べれば、裕福で頭がいいはずだ。

何をきっかけに
こんなことになってしまったんだろう。

「…まぁ、顔に傷つけられないだけましか。」

彼らも馬鹿じゃないらしく…いや、人のことを脅して、金を掻っ攫う。バカか。アホ？

いや、人間の底辺みたいなやつだけど、
顔は綺麗にそのままにしてくれている。

顔に傷なんてつけられたら、
北斗に、両親に、なにを言われるかわからないから。

・

「ただいまー。」

おそらくこの家には2人しかいないだろうけど、その2人に聞こえればいいな、なんて思って大きめの声で毎日、挨拶をする。

「大我、おかえりなさい。」

「ただいま、ジェシー。」

「北斗は？」

「朝は起きて一緒に家事したけど、今はぐっすり寝てるよ。」

「そっか、ありがとう。」

彼は、世でいう、
執事というものだろうか。

とは言っても俺は、執事というよりほぼ友達…友達と言うと、何か違うけど。

相談相手でもあるし、
遊び相手でもあるし、
趣味を共に楽しむ仲でもある。

家族には、ジェシーにももちろん、学校のことは言えてない。

でも、あともう少しで、受験がやってくる。

それまでにあいつらだって、
こんなことやめてくれるはずだ。

そう信じて、俺はもう少し、頑張れる。