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NO side
隣の病室から、
耳を塞ぎたくなるような音が響く。
慎太郎には恐らく、聴き慣れた音だ。
隣の様子は気になったが、慎太郎は隣の病室には行けず、自分のベッドでじっと、座っていた。
そこに、樹のクラスメイトである、
Aが、入ってくる。
ちょうど1ヶ月前だろうか。
慎太郎が、面会に来てくれたクラスメイトを見送ろうと、病院の出口に行くと、彼女がたまたまいて、暗い顔をしていたため、声をかけたのだ。
そこからよく、Aは病室に通っている。病室では、2人でただただ、話すだけ。
今日もいつも通り、
Aは彼の病室を訪れた。
でも、いつもとは何か違う。
隣から、彼女にとっては聴き慣れない音が響いていた。ただならぬ雰囲気に、
「…今日は、か、帰るね。」
「…いや待ってA、一緒に居て。」
彼と出会って、1ヶ月。
まだまだ知らないことばかりだけど、
聞いたこともない弱々しい声に
1人にはさせられない、そう思った彼女は、いつも通り、ベッドのそばにある椅子に座った。
ただ、何も話せない。
話す言葉も見当たらない。
シンと静まり返った部屋に
焦った声が聞こえてくる。
「…北斗っ！！」
その人は、
走ってきたのだろうか、とても息遣いが荒かった。
様子は見られないが、
その人に向かって、看護師さんか誰かが
話しかけているようだった。
少しだけ、隣が静かになり、彼女はやっと口を開く。
「…隣の人、知り合いなの？」
「うん。3ヵ月くらい前に、静岡の方から転院してきたんだけど。ずっと本読んでてさ、俺気になって声掛けたの。」
「あ、この前話してた子？」
「そう。最初は話してくれなかったんだけど、最近はよく話してくれて。小説家になりたい、って言ってた。」
小説家なんて凄いなぁ。
彼女はそう思いながら話を聞いていた。
隣で起こっている状況から逃れるために。
「北斗さ、『次の発作が起きたら俺耐えられる自信ない』って、笑って話してた。この病院に来たのも最後の希望だって話してたけど…」
そんな話に慣れていないAは、
そんなことを話す慎太郎の気持ちも、
そんなことを笑って話す隣の彼の気持ちも、全然分からなかった。
「多分…多分、もうダメなんだと思う…」
ただ分かることは１つだけ。
１つの命が消えそうになっているということを。
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作者名：Moku | 作成日時：2020年5月23日 8時
