私の心寂しさを、貴方で埋めて。【太宰治】

9:心情…… ページ10

無事にAちゃんと電車に乗り込めた。

階段を上がっている途中、Aちゃんの靴が脱げてしまうという、とんだハプニングが起きたが、心配しなくても電車は次もあったので大丈夫だった。

Aちゃんの遠距離中の彼氏との分を、私で埋めるという少し変わったことをしていると、私自身でも思うのだが、これは決して彼女に”私と浮気をしよう”ということではない。

あくまでこれは彼女の“お手伝い”だけであって、私とは今まで恋人関係ではなく“仕事の同僚”というポジションだった。

だけど………

何故、今日一日でこんなに彼女に惹かれてしまったのだろう……

彼女が、私が選んだワンピースを試着して、私に見せてくれた時？

厭、あの階段の出来事か……？

駄目だ。

Aちゃんにそんな感情を持ったら……彼女には、遠距離だけれど、2年間も想い続けている恋人がいるのだから────

『太宰さん……太宰さん……！！』

｢ごめん、ぼーっとしてて……もう、着く？｣

『はい、着きますよ……？』

｢そっか……ありがとう。｣

Aちゃん、君は狡いよ。

君は、不安定な私の心を揺らすんだから──

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