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突き出した私の手に及川が乗せたのは、自分の手ではなく、ポケットに入っていたカイロだった。
確かにあったかい、けど。
「(……寒い、)」
手、繋ぎたかったのに。
じろりと再度睨みあげれば、「なに、カイロいらないの?」わざとらしく笑う及川。
「いる」
「バス来たら返してね、俺だって寒いんだから!」
「部活したんだからいいじゃん」
「よくないよ」
さみい、と及川がマフラーに顔をうずめ、ポケットに手を突っ込む。
手、繋いだらあったかいのに。
そう言ったって、及川はへらりと笑って「そうね〜」とはぐらかすだけだろう。
あったかいけど、寒いや。
「ねえ及川」
「ん?」
「……なんでもない、」
「なんだよ」と及川が笑う。
……「好きだよ」って言ったら、困った顔で笑うだけのくせに。
その言葉は飲み込んで、代わりにどうでもいい話題をはきだした。
「春高、どう?」
「どう、ってなに。勝つに決まってんじゃん」
「ウチの方が強いから勝つよ」
「は〜〜〜〜??????生意気!!くそ生意気!!今年は絶対青城が勝つからな!?」
キャンキャン、及川が吠える。……親戚の家で飼ってるポメラニアン、こんな感じだったなあ。
ぼんやりとそんなことを考えていると、
「あ、バス来た」
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作者名:彗 | 作成日時:2019年4月26日 13時