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｢正直、岩泉が主将なんだと思ってた｣
｢聞き飽きたわ｣
やはりみんな思うことは同じらしい。
だって及川と岩泉なら、どう考えたって岩泉の方が向いてる。100人いたら98人は岩泉と答えるだろう。残りの2人はよっぽどの顔面至上主義だ。
｢でも、及川が主将って言われた時、それはそれでしっくり来た。意外だったけど、及川なら大丈夫だと思う｣
｢……なんで及川はお前と付き合わねーかなあ｣
｢まだその話する？｣
何でその話になるんだ、と目を細める。そんなの私が知りたい。
うーんうーん、と唸り声をあげる岩泉。唸りたいのはこっちだ。
と、いきなり岩泉の顔がぐりん、とこちらを向く。いきなりのことに驚いたが、なんとか声をあげずにその勝気な目を見つめ返す。
｢(……同族嫌悪、かな)｣
｢……なに岩泉、人の顔じっと見て｣
｢いんや……、まあ、な、｣
珍しく歯切れの悪い岩泉の心理を探ろうと懐かない猫のような目を見つめるが、よく分からない。
……それにしても目つき悪いな、岩泉。私ほどじゃないけど。
と、私の最寄りのバス停が次だと気づき、カバンから定期券を出す。
｢……じゃあ、私もうそろそろ降りるよ｣
｢おー……あ、そうだ。耳寄りな情報だ。今及川フリーだぞ｣
｢……それが何｣
｢チャンスだろ｣
｢チャンスじゃない。きっと及川はしばらく彼女作らない。今年のインターハイと春高、全国に行くことに賭けてるから｣
あと、
｢今、私を試したでしょ、岩泉｣
別に怒ってはない。でもいい気分でもなかった。
無の表情で岩泉を見据えると、やっぱりその猫のような目が好戦的に細められた。くつくつ、喉仏が楽しそうに上下する。
｢やっぱ飽きねえな、お前｣
｢……岩泉は食えないから苦手｣
｢そう言うなよ、じゃあな気をつけて帰れよ｣
ひら、と気だるげに振られた右手を見つめ返すだけに留め、私はバスを降りた。
幼なじみって似るんだろうか、食えない男達だ。
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作者名：彗 | 作成日時：2019年4月26日 13時
