【刀剣乱舞】成り代わり鶴が本丸で奮闘する話【２】

練度49 ページ2

「鶴さん、鶴さん、無事で良かったよつるさーーーん！」

「光坊落ち着け苦しい締まってる落ちる！！」

飛びつくように抱き縋る光忠。

赤い目元できっと泣いたんだろうと察せられる分、この程度の抱擁は受け入れるべきか……と最初は大人しくしてたが限界だ！
ギブギブ！！起きたばかりで落ちる！自分の打撃考えて！

「おい光忠！」
「旦那！そこまでにしとけって」

戻ってきた大倶利伽羅と、連れられて来た薬研が引き剥がしてくれた。
ついでに軽食を作ってくれるつもりらしい大倶利伽羅が光忠を引きずって行った。
練度差とは無情である。

そういえばやたらお腹が空いている。

「よぉ気分はどうだい？痛いところは？」

「今分のダメージがなけりゃ問題無かったな」

「勘弁してやってくれ。なんせホント、折れてないことが奇跡な状態で、手入れが終わってもまるまる三日も目覚めなかったんだ」

三日？Three days！？まじでか。

「伊達の旦那方はろくに寝れずにいたし、俺っちだって、気が気じゃなかったんだぜ？」

そう言う薬研の目が潤んでいる。大倶利伽羅にしても薬研にしても、普段そんな弱った姿を見せてくれない子の涙が痛い。

「ごめんな、心配かけた」

「本当に体は何ともないか？」

「あぁ、きちんと手入れされている。なぜ三日も目覚めなかったのか分からないが…」

「こんのすけが言うには、今回ほどの重傷を負った場合は肉体を直しても精神疲労で目覚めないことは稀にあるらしい」

あー、確かに破壊ボイスが口からまろび出た気がする。
むしろよく折れなかったと改めて思う。

助けに来てくれたのだろう。
彼らからすれば得体の知れない敵であろう検非違使のいる戦場に、未だ折れていないのかも分からない私のために。

とくに大倶利伽羅には悪いことをした。
不器用に優しいあの子に仲間を切り捨てることを強いた。

初めて見た彼の涙が忘れられない。

スッと手を滑らせれば、もう乾いてしまっているけれど、確かにこの頬を滑り落ちたのだ。

「とにかく、目覚めてくれて良かった。もし折れたりされた日にゃ、明日…いやもう今日か…めでたい日が通夜になるところだったぜ」

そうか、あの日から三日ということは

「そりゃ、笑えないなぁ」


主が審神者になってから、一年が経とうとしていた。

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