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思い出はふとした時に ページ32

ころり。

皿の上で艶々と青い宝石のように光るブルーベリーがフォークから逃げるように転がった。

「あ」

なぜかそれがあの日、ありったけの力と願いを込めたラピスラズリと重なって、

遠い記憶を呼び覚ます。


突然ぐるりと視界が回るような速度で思い出したその過去にそっと手にしていたフォークを置き、テーブルに両肘を立てて寄りかかって組んだ両手を口元に当てた。

「………うそでしょ」

ゲンドウポーズで自分のあまりのアホさに打ち震える。

皿の上でデニッシュの温かさに溶けるソフトクリームが早よ食えと急かしているけどちょっと待ってて欲しい。

「いや待って、ええ〜?……我ながらなんでこのタイミングで思い出した」


遠い昔。私が密やかにAと呼ばれ始めていた頃の事。

弱った一人の妖怪を助けたことがあった。

ほんの数日だけ共に過ごしただけだけれど、それは少なからずその後の私に影響をもたらした数日間であり、今の私を形作った転機であり、今思えば私が初めて翼の下で保護した妖だった。


銀の髪を持ち、海より深く空より澄んで炎より熱く燃ゆる美しい瑠璃色の瞳を持った付喪神。


「『山姥切長義』。……長義くん」


唱えるように呼んでみる。

ああ全く、舌に馴染むはずだ。山姥切国広に違和感を抱くはずだ。

覚えていなくても私にとっての「山姥切」は、最初から「山姥切長義」だった。


一つ思い出すと芋づる式に全てを鮮明に思い出す。

最後の夜に敵を引きつけて駆けていった背も。
翼下の長義くんを傷付けられた怒りも。
この手に握った霊剣の切れ味も。

そして、別れの朝も。



「お客様、どこか具合が悪いですか?」


ふとかけられた声に顔を上げると、オレンジのロゴが入った黒いエプロンのホールスタッフ。

「あっごめんなさい。ちょっと考え事をしてただけで、大丈夫です。ありがとう」

そう言って微笑めばホッとした顔で一礼して下がる女性。わざわざ心配して声をかけてきてくれたらしい。

いいね、ああやって気遣われるのは嫌いじゃない。妖怪だって優しくされるとホワホワするのだ。
会計の時にでも一言褒めておこう。
頑張りは報われるべきだよね。

せっかくの熱々デニッシュは冷めて、アイスも半分ほど溶けてしまったシロノワにフォークを突き刺した。

ミニサイズは普通サイズ→←さあ今こそ己を叫べ!



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翡翠琥珀@カリナと咲(プロフ) - ァ"ァ"ァ"好きぃ... (2022年3月31日 15時) (レス) @page42 id: cceed3ce75 (このIDを非表示/違反報告)
mokohu(プロフ) - 返事がない只の屍のようだ。さん» ちょぎくんの布教が出来て嬉しいです!沼へようこそ。 (2021年3月5日 16時) (レス) id: 2e4fc5a96b (このIDを非表示/違反報告)
mokohu(プロフ) - sesiroさん» ありがとうございます。成り鶴もよろしくお願いします (2021年3月5日 16時) (レス) id: 2e4fc5a96b (このIDを非表示/違反報告)
mokohu(プロフ) - まるさん» ありがとうございます (2021年3月5日 16時) (レス) id: 2e4fc5a96b (このIDを非表示/違反報告)
返事がない只の屍のようだ。 - はじめまして!そして完結おめでとうございます!!大好きです!!!終わってしまい寂しいですがちょぎ君、思い出して貰えて良かったね゙ぇ〜!(T△T)ズビィ この小説を切っ掛けでちょぎ君にハマりました!ありがとうございます!!(謎)これからも頑張って下さい! (2021年3月5日 12時) (レス) id: 2157a47614 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:mokohu | 作者ホームページ:http://nanos.jp/atlant2d/  
作成日時:2020年12月5日 14時

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