追跡者 ページ10
夕焼け色に染まりつつある街を、黒いセーラー服の少女が足早に駆け抜けて行く。
『役に立てるかは判らない、でも一人でじっとしてるなんて出来ない』
その時だった、なにかが塀から飛び降りてきたのは。
にゃおん
それは三毛猫だった。
猫はこちらを見て鳴くと、そこを退こうとしなかった。
『この猫、なんで私を怖がらないんだろう』
Aは子供だけでなく生き物にも嫌われている。
なのにこの猫は怯えることなく、金色の瞳でじっと見つめてくる。
「今は猫に構ってる暇は…」
にゃあ
その猫はじっとAを見つめる。
その目がまるで人のようで視線を外せなかった。
行き交う人の流れが、スローモーションのように感じる。
『混乱している時こそ、落ち着きなさい』
「！」
思い出すのは、父の言葉。
『そうだ、今の私は冷静じゃない、落ち着け、落ち着かなきゃ』
深く息を吸い、吐く。
その時、海から強い風が吹いた。
潮の香りと同時に、あることに気づく。
そして、先程とは比べ物にならない速度でAは走り出した。
「！」
三毛猫はにゃあと鳴き、そして何処かへと消えた。
「はっ、…はっ…」
湾に面した廃工場地帯を駆け抜ける。
一呼吸ごとに肺に空気が出入りする。
足には自信があったが、相手の方が上手だったようだ。
いや、そんなこと初めから判っていた。
だからあえて、ここにきたのだ。
「…」
徐々に速度を落とし、やがてピタリと足を止めた。
くるりと後ろを向き、誰もいない空間にホルスターから取り出した銃を向ける。
「居るんでしょう、隠れても時間の無駄だから出てきたら」
一秒、二秒、三秒、四秒目はカウントされなかった。
工場の影から、ゆらりと紅色の影が出てきた。
「下手な追跡はしていないつもりだったのにのう」
紅色の髪を結い上げた女は、口元に手を当てて楚々と微笑む。
Aは警戒を一切崩さず、屋根の上に目を向けた。
「もう一人いるでしょう」
紅色の女の目が見開かれ、やがて笑う。
瞬間、屋根から黒い影が降り立つ。
「よぉ、久しぶりだな」
重力を感じさせない動作で、男は口角を上げた。
Aの冷たい目が二人の追跡者を見つめ、
「ポートマフィア」
この街の支配者の名前を、口にした。
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ゆんこ(プロフ) - 夢小説で初めて泣きました…3周くらいしても毎回泣いてしまいます、！ (9月11日 0時) (
レス) @page50 id: ea003ef446 (このIDを非表示/違反報告)
蒼真 - ほんとにすごいです…何回も読み返しています…その度に泣いてますよ…ほんとに天才だと思います。いやこれまじでアニメ化して欲しい。小泉ちゃん大好きです!!!! (8月19日 15時) (レス) @page50 id: c4ce57e384 (このIDを非表示/違反報告)
夏蜜柑(プロフ) - 本当に久しぶりに物語を読んで泣きました！すごく心に響いて毎度毎度わかっているのに泣いてしまいます。この物語を描いてくださってありがとうございます！ (8月14日 15時) (レス) @page50 id: d710d605b3 (このIDを非表示/違反報告)
ぺぽん(プロフ) - １年ほど前からずっと本編も番外編もBRASTも読み返しています🥹一つ一つの表現が素晴らしすぎて、同じく小説を書いているのですが勉強させてもらってます。ずっと応援し続けます！ (2022年10月27日 12時) (レス) id: 83a944f022 (このIDを非表示/違反報告)
桜月(プロフ) - 本編、番外編を見てから来ました。二人のやりとりが本当に儚くもあり、切なくもあって、、本当に涙無しでは読めないくらい感動しました。素敵な作品に出会えて本当に良かったです！このような素敵な作品をありがとうございました。 (2021年9月21日 20時) (レス) @page50 id: df8a2b67ab (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：もこすけ
| 作成日時：2019年11月9日 21時
