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盤上で踊りましょう ページ19

廃工場の奥、区別しやすくする為か、二色のチェック柄になっている床は薄汚れている。
錆びた鉄の匂いと潮の香り、そんな中に感じる刺激臭。
汚れた床に、飛び散った液体と硝子の欠片が。



「薬品か?」



「いや、香水じゃな」



刺激臭の正体は、割れた香水の匂いだった。
薬品ならガスなどを心配するが、香水ならせいぜい匂いが強い程度。



「あの娘の私物かのう」



逃げる途中で落としたのか?
いや、あの娘がそんなミスをするはずがない。



ピー、ピー、ピー



「…ま、罠だよな」




一つしかない出入口が、警報音を立てながら閉まる。
閉じ込めるつもりなのだろう。
ではあの娘は外か、中か。
単純に考えれば外だろうが、ここに来る前にあの娘はいなかった。



「まさか、迎え撃つ気か?」



電気ひとつないとはいえ、ある程度の視界は確保できる部屋。
闇の中での戦闘など、ポートマフィアの彼らからすれば日の下での戦闘より手慣れている。



少なくとも、そう思っていたのだ。



パァン!!



何も無い筈の暗闇から、列を成して飛んでくる銃弾が、
静寂を破る開幕の合図となった。



「はっ!?」



自分達の真横を通る銃弾に、血の気が吐く。
引き金を引く音も聞こえなかった、銃口もなにも見えなかった。
なのに一斉に発砲された。



パァン!!



地面に伏せ、避けたと思ったら今度は逆方向から一斉射撃される。
普段ならこの程度異能で弾ける。
だが、今は異能を封じられている為、当たる前に避けないといけない。



「チッ、どこから攻撃してやがる!?」



叫んだ中也はあることに気づき、ゾッとした。
隣に伏せ、少女を目視で探す紅葉に口を開く。



「姐さん、空間操作の異能だ」



「なんじゃと…!?」



「発砲音はするが銃口が無ぇ。
それと…弾が壁に当たる音も一切聞こえねぇだろ」



紅葉は目を見開く。
確かに、球が壁に当たる音がしない。
それはつまり、



「相手は異空間から銃を撃ち、その弾が壁に当たる前に再び異空間に繋げている。
…そうすりゃ、無限に俺たちを攻撃できるからな」



「どういうことじゃ、これはあの娘の異能では…!」



その瞬間、別方向から三発、銃弾が飛んでくる。
咄嗟にそれを避ける。



「さぁ、踊ってくださいな」



そんな笑い声が、銃声にかき消された。

出鱈目な攻撃→←彼らの嘘と少女の答え



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ゆんこ(プロフ) - 夢小説で初めて泣きました…3周くらいしても毎回泣いてしまいます、! (9月11日 0時) (レス) @page50 id: ea003ef446 (このIDを非表示/違反報告)
蒼真 - ほんとにすごいです…何回も読み返しています…その度に泣いてますよ…ほんとに天才だと思います。いやこれまじでアニメ化して欲しい。小泉ちゃん大好きです!!!! (8月19日 15時) (レス) @page50 id: c4ce57e384 (このIDを非表示/違反報告)
夏蜜柑(プロフ) - 本当に久しぶりに物語を読んで泣きました!すごく心に響いて毎度毎度わかっているのに泣いてしまいます。この物語を描いてくださってありがとうございます! (8月14日 15時) (レス) @page50 id: d710d605b3 (このIDを非表示/違反報告)
ぺぽん(プロフ) - 1年ほど前からずっと本編も番外編もBRASTも読み返しています🥹一つ一つの表現が素晴らしすぎて、同じく小説を書いているのですが勉強させてもらってます。ずっと応援し続けます! (2022年10月27日 12時) (レス) id: 83a944f022 (このIDを非表示/違反報告)
桜月(プロフ) - 本編、番外編を見てから来ました。二人のやりとりが本当に儚くもあり、切なくもあって、、本当に涙無しでは読めないくらい感動しました。素敵な作品に出会えて本当に良かったです!このような素敵な作品をありがとうございました。 (2021年9月21日 20時) (レス) @page50 id: df8a2b67ab (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もこすけ | 作成日時:2019年11月9日 21時

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