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彼女の立てた作戦 ページ16

彼らは思い違いをしていた。
異能力を操る異能力者とて、まだ十八の子どもだと。



『何処が子どもだよ、化け物じゃねぇか』



かつて接触した中也は、彼女の危険性は理解しているつもりだった。
だがまさか、ここまでとは思わなかったのだ。
美しい顔の下に、獣の牙をうまく隠しているなんて誰が思うだろうか?



「異能を封じて、接近戦に持ち込もうって簡単か?」



だが、接近戦なら中也達の方が有利だ。
目の前の少女は武術の心得があるようだが、ポートマフィア屈指の体術遣いの中也に勝てる相手はいない。
接近戦になったらすぐに捕まえられる、そう思っていた。



「…私が、そんなに莫迦だと思う?」



少女はフッと唇を歪ませ、そのまま走り出した。
後ろに広がる闇、廃工場の更に奥に消えていく。



「姐さん」



「十中八九、また何かを仕掛けてくるじゃろう」



異能が使えない今、銃弾を撃ち込まれたら弾くことはできない。
二人は少女が消えた工場の奥に進む。
首領の命令を遂行するために、全ては掟の為に。



それがポートマフィアだから。



「ッ、は、は…はッ…」



薄暗い廃工場の奥、暗闇に身を潜める細い体が震える。
握りしめた手が震える。
怖いのか?それともこれから行うことを躊躇っているのか?



「大丈夫、きっとうまくいく、大丈夫」



握りしめた拳銃の弾を確認する。
残りは五発、ストックを入れても多くはない。



「大丈夫、やれる、私ならやれる」



「なにをぶつぶつ云っておる」



突如聞こえた声に、Aはその場から飛び退く。



「なんじゃそこまで驚くこと無かろう」



「貴方、今どこから…!」



そこには、黒い帽子に茶色の服を着た、髭の老人がいた。
廃材の上に座り、手に持っているステッキを振る姿は猫のようにも見えた。
ポートマフィアの人間には見えない、だからAはその人に叫ぶ。



「早くここから逃げて!じゃないと貴方、巻き込まれる!!」



青い顔で叫ぶAに、その男はキョトンと目を丸くさせる。
そして、ズイッと顔を近づけてきた。



「驚いたのう、似ているのは顔だけか。
彼奴なら巻き込まれても『運がなかったですね』の一言で済ますがのう」



その人は、愉快そうに笑う。



「貴方は…誰」



「儂か?儂は」



夏目漱石じゃ。
その人は、確かにそう云った。

夏目漱石という男→←異能力者の生命線



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ゆんこ(プロフ) - 夢小説で初めて泣きました…3周くらいしても毎回泣いてしまいます、! (9月11日 0時) (レス) @page50 id: ea003ef446 (このIDを非表示/違反報告)
蒼真 - ほんとにすごいです…何回も読み返しています…その度に泣いてますよ…ほんとに天才だと思います。いやこれまじでアニメ化して欲しい。小泉ちゃん大好きです!!!! (8月19日 15時) (レス) @page50 id: c4ce57e384 (このIDを非表示/違反報告)
夏蜜柑(プロフ) - 本当に久しぶりに物語を読んで泣きました!すごく心に響いて毎度毎度わかっているのに泣いてしまいます。この物語を描いてくださってありがとうございます! (8月14日 15時) (レス) @page50 id: d710d605b3 (このIDを非表示/違反報告)
ぺぽん(プロフ) - 1年ほど前からずっと本編も番外編もBRASTも読み返しています🥹一つ一つの表現が素晴らしすぎて、同じく小説を書いているのですが勉強させてもらってます。ずっと応援し続けます! (2022年10月27日 12時) (レス) id: 83a944f022 (このIDを非表示/違反報告)
桜月(プロフ) - 本編、番外編を見てから来ました。二人のやりとりが本当に儚くもあり、切なくもあって、、本当に涙無しでは読めないくらい感動しました。素敵な作品に出会えて本当に良かったです!このような素敵な作品をありがとうございました。 (2021年9月21日 20時) (レス) @page50 id: df8a2b67ab (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もこすけ | 作成日時:2019年11月9日 21時

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