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それは、鏡花が探偵社に保護されて直ぐの事だった。
電車での人虎捕獲に失敗し、再び連れ戻された時、
Aは戻ってきた鏡花に一言だけ、
「どうして戻ってきたの」
そう云った。
その時のAの顔はよく見えなかった。
だが、その声は何処か悲しそうに聞こえた。
それから、しばらくして。
「鏡花」
「！」
社員寮に帰ろうとした鏡花の背後で、聴き慣れた声がした。
咄嗟に短刀を構えて振り返ると、闇に同化するような藤色の着物の少女が立っていた。
見間違えるはずもない、自分と同じポートマフィアに居た姉貴分、Aである。
「連れ戻しに、来たの？」
鏡花の問いに、Aはその紫色の瞳で彼女を見据える。
ゆらりと体が揺れたと思うと、彼女は鏡花に近づいてきた。
「こ、来ないで…私は、戻るつもりは…」
「紅葉様は諦めていらっしゃらない」
「え…」
「じきに来るかもしれない、気をつけて」
それだけを云って、Aは鏡花の横を通り過ぎて行く。
なぜ、連れ戻しに来たんじゃないの？
動揺から、鏡花は携帯を握りしめて叫ぶ。
「なんで…？」
「…なにが？」
「私を…連れ戻さないの？」
こんな忠告、場合によっては裏切りと取られても仕方ない。
マフィアを抜けた者に忠告をするなど、
しかも彼女の口ぶりでは恐らく紅葉にも秘密で来たのだろう。
「…別に、私はそこまでお節介じゃ無い」
背を向けるAの髪に刺さった簪が夜風に揺れる。
「"自分の意思"でポートマフィアを抜けた者を連れ戻す程、私は優しく無いから」
「…！」
「鏡花」
振り向いたAは、優しさとほんの少しの悲しみをうつした瞳で、少しだけ笑った。
「もう、戻ってきてはいけないよ」
貴女は、光に咲く花になれる。
「日の当たるところで、幸せになりなさい」
私は多分無理だから。
生まれ持った本質がそれを許さないだろうから。
Aはいつかそう語っていた。
「じゃあ、さよなら」
「待っ…」
ひらりと手を振ったAは、闇夜に消えていった。
残された鏡花は、震える手で携帯を握りしめる。
『貴女が一番、光に焦がれているはずなのに』
ポタリと、地面に落ちたのは鏡花の涙だった。
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シア - 続き楽しみにしてます！！ (1月4日 15時) (
レス) @page50 id: 5afea0a2a0 (このIDを非表示/違反報告)
巫女 - もこすけさんが戻って来てくれたら嬉しいです‼‼‼‼ (8月2日 22時) (レス) id: 31d4d35068 (このIDを非表示/違反報告)
巫女 - この作品はとても面白くて大好きです‼‼‼‼特に猟犬との絡みが見ててとても面白くて楽しいです‼‼‼‼文章力がとても高いので作品に引き込まれます！最近はこの作品をモチベーションにして頑張っています‼‼ (8月2日 22時) (レス) id: 31d4d35068 (このIDを非表示/違反報告)
絵の具セット - 番外編もめちゃくちゃ面白いしキュンキュンします！！これからもがんばってください！！！更新再開待ってます！！ (2023年4月10日 20時) (レス) id: b2c10b1855 (このIDを非表示/違反報告)
アスパラ - とっても面白かったです！続きまってます！ (2023年4月8日 22時) (レス) id: 31d4d35068 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：もこすけ
| 作成日時：2019年10月13日 19時
