二百五十六話 ［密室消失トリック］ ページ8
虫太郎の異能により監視カメラを難なく突破した。
いざ外に出ようと、一歩踏み出した時、敦が声をあげる。
「待って！」
その視線の先には、黒い特殊部隊を引き連れた安吾の姿があった。
「安吾さんです！」
「何！？何故だ、私の異能は完璧な筈…！」
「…異能を破る力が働いたとしたら」
「真逆…安吾さんの異能！？」
このままでは負ける。
Aたちの後方は行き止まり、金庫部屋はあるが中に入れば出られない。
追い詰められた、万事休すだ。
『なにか、何か策は無いのか…』
もしこのまま捕まれば、母の口封じに殺されるだろう。
『こんな莫迦な結末、あってたまるか』
グッと拳を握りしめ、隠し持っていた拳銃に触れた。
その瞬間、虫太郎がなにかを思いついたように顔を上げる。
「来い！」
その目は先程と違い、覚悟を決めた者の目をしていた。
『そうだ…私は一人じゃ無い』
信じなければ。
仲間を、そして抗うという選択肢を。
「標的発見！金庫に逃げ込みます！」
数分後、特殊部隊金庫に入る人影を発見した。
閉じられた扉の前に爆薬を設置し、扉ごと吹き飛ばす。
武装した部隊は銃を持ち、部屋に入った。
「ッ、司令！誰も…居ません！標的が消えました！」
安吾はその言葉になに、と叫んだ。
霧のように消えた標的、試しに床に触れてみても傷一つない。
「…ない…壁や床を斬って逃げた痕跡も、
それどころか異能を使った痕跡すらないのに！…完全に、消えた…！」
残されたのは、混乱のみ。
彼らは気づかない、隣の金庫部屋から四つの影が飛び出したことに。
「はっ…はっ…」
銀行の裏、細い路地をAたちは走っていた。
ある程度まで走ると、少しスピードを落とす。
「上手くいきましたね！」
「フハハ！見たか特務課！」
「真逆あんな芸当で逃げるなんて…」
「何のことはない、典型的な密室消失トリックだ！」
虫太郎は得意げに笑う。
特務課が見た標的は鏡花の異能、夜叉白雪。
夜叉が扉を閉め、特務課がそこで押し問答しているうちに、
隣の部屋に隠れていた四人は堂々と逃げ去る。
「はは…凄い…全然思いつかなかった」
この成功は、まだ希望があると思わせてくれた。
まだ、生きていられるのだと、その生を噛み締めて。
二百五十七話 ［どうやって信じる］→←二百五十五話 ［完全犯罪の力］
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さんしょくだんご(プロフ) - この作品の中の文章の数々に心をうたれました。素晴らしい作品を本当にありがとうございます (7月24日 1時) (
レス) @page49 id: 9ce43d97c3 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - 田中りんさん» コメントありがとうございます。小泉は「これすごく便利では」と思い、喜んでいました。某幹部さんは爆発した瞬間、元相棒の仕業だと気づきました。メリークリスマス、そして良いお年を。 (2020年12月25日 19時) (レス) id: 102f3088ed (このIDを非表示/違反報告)
田中りん(プロフ) - 初コメ失礼しますー 銃で喜ぶ小泉ちゃん…私もエアガンとか大好き人間なので人のこと云えない…某幹部さんは完全なるとばっちりですねwwメリークリスマス＆良いお年を！！ (2020年12月25日 0時) (レス) id: 59051e49c3 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - まっちょりさん» お久しぶりです。楽しみに待っていてくださりありがとうございます。皆様を楽しませることができる続編をかけるように頑張ります。応援よろしくお願いします。 (2020年12月18日 23時) (レス) id: 102f3088ed (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - 雪月さん» お久しぶりです。待っていてくださりありがとうございました。20巻は驚きの嵐でした。 (2020年12月18日 23時) (レス) id: 102f3088ed (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：もこすけ
| 作成日時：2019年5月18日 18時
