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二百九十三話 [共闘] ページ45

操作された金属が警備員の銃を弾く。
訓練された異能者が操られ、味方に異能を発動させる。



「ッ、ゲホッ…」



「金属操作!!」



激しく異能を使った副作用で口から血が噴き出る。
一瞬動けなくなった瞬間を立原がフォローする。
立原の死角からの攻撃はAがフォローする。
そうやって、上層階に行こうとする警備員を二人で排除し続けた。




ドォン!!



上の階から激しい戦闘音がする。
散弾銃のような音もする、シグマが猟犬と戦っているのだろう。



『早く、早く敦達の元へ』



漸く警備員が現れなくなった頃、Aは静かに拳銃を放り投げた。
もう弾切れだ、予備の弾も今さっき切れた。



「…なぁ、小泉A」



爆発により広がった空を背に、立原が口を開く。
だから、気づかなかったのだ。



「俺は…」



立原に伸びる、死の香りを纏った赤い血の糸に。



グイッ



立原の体が、後ろに引っ張られる。
強い力だった、鉄線のように硬い糸が立原の体を引く。



「っ!!」



立原の腕に絡まる、血の糸。
ホーソーンの緋文字が立原を空から引き摺り下ろそうとしていた。



『兄貴』



呆然とする立原は、走馬灯を見た。
兄が優しい顔で頭を撫でてくれた記憶、反抗心から猟犬になった記憶、マフィアに潜入した記憶。



『あぁ、死ぬんだ俺』



異能も間に合わない、この高さでは猟犬とて即死だ。



「立原!!」



なのに、立原の手は、Aによって掴まれていた。



『駄目だ止めろ、お前じゃ俺を引き上げられない』



華奢なAでは立原を引き上げられない。
手を離せ、でないと一緒に落ちてしまう。



「大丈夫」



そんな言葉が聞こえた気がした。
瞬間、ぐるりと立原の視界が回転する。



「は…?」



遠心力を利用して、Aが立原をカジノの方に投げたのだと気付いた時には、繋いでいた手は離れていた。
立原と場所を入れ替えたAの体が、空に浮かぶ。



「A!!」



伸ばされた手は、届かない。
あと少しなのに、立原の指はAの体に届かなかった。



『なんで俺を助けた!!』



そう叫びたかった。
なのにAは立原の顔を見ると、ひどく穏やかな顔をして、笑った。



「信じて」



落ちていく彼女の最後の言葉はそれだった。



ー私は信じなくてもいいからー



ー探偵社は信じてー



絶叫と共に伸ばされた手は交わることは無く、
Aの体は吸い込まれるように真っ青な空に消えていった。

二百九十四話 [堕天]→←二百九十二話 [復讐の連鎖]



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さんしょくだんご(プロフ) - この作品の中の文章の数々に心をうたれました。素晴らしい作品を本当にありがとうございます (7月24日 1時) (レス) @page49 id: 9ce43d97c3 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - 田中りんさん» コメントありがとうございます。小泉は「これすごく便利では」と思い、喜んでいました。某幹部さんは爆発した瞬間、元相棒の仕業だと気づきました。メリークリスマス、そして良いお年を。 (2020年12月25日 19時) (レス) id: 102f3088ed (このIDを非表示/違反報告)
田中りん(プロフ) - 初コメ失礼しますー 銃で喜ぶ小泉ちゃん…私もエアガンとか大好き人間なので人のこと云えない…某幹部さんは完全なるとばっちりですねwwメリークリスマス&良いお年を!! (2020年12月25日 0時) (レス) id: 59051e49c3 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - まっちょりさん» お久しぶりです。楽しみに待っていてくださりありがとうございます。皆様を楽しませることができる続編をかけるように頑張ります。応援よろしくお願いします。 (2020年12月18日 23時) (レス) id: 102f3088ed (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - 雪月さん» お久しぶりです。待っていてくださりありがとうございました。20巻は驚きの嵐でした。 (2020年12月18日 23時) (レス) id: 102f3088ed (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もこすけ | 作成日時:2019年5月18日 18時

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