二百七十七話 ［チェスの駒を動かす］ ページ29
肌が粟立つほどの��子の殺気。
��子が一番怖い時は、怒った時でも拷問の時でも無い。
「うむ、判った！此処の警備は万全じゃ、儂等は帰るとしよう！」
��子が、相手の云う事を素直に聞いた時である。
ドッ！！
次の瞬間、カジノ全体に響き渡る不気味な爆音と振動。
顔を青くさせたシグマが部下に何があったと叫ぶ。
何者かが盗んだガスボンベで出入口を爆破したのだ。
「くかかかか！これで誰一人このカジノからは出られぬ！
後は探偵社をじっくりと狩るだけよ！」
��子の、嗜虐的な高笑いがカジノのフロアに響き渡った。
「…始まった」
伝わってきた振動に、Aはそう呟いた。
モンゴメリが部屋の外を確認する。
「カジノの出入口が爆破で埋められたわ」
これで脱出は不可能となった。
探偵社員にしろ、モンゴメリにしろ、もう出ることは出来ない。
膨大な敵の中、彼らは閉じ込められたのだ。
「まさに四面楚歌…普通はそう思うけれど」
Aの手の中には、ムルソーにいる太宰との連絡用に渡されたタブレットがある。
相変わらず人間離れした人だと、Aの赤い唇はクスリと笑った。
「太宰さんの作戦通りだ」
全ては、あの人の計画通りなのだから。
「ナイトをF6からD5へ」
「…キングをE7からE6へ」
静かなムルソーの囚人室で、二人の異星人の声が響く。
「ふむ、君らしい手だ、感情が悪い」
「えぇ、悪意こそ神がヒトに与えた最高の果実です」
微笑む魔神に、太宰はニコリと笑う。
「頗る同意見だね、クイーンをE2からC4へ」
「クイーンを戦場に？大胆ですね」
「君が相手ではね、使える駒は全部使わねば」
これはチェスだ、生き残りを賭けた人間と人間の。
究極の頭脳戦、駒に見立てた仲間の命。
「…貴方のクイーンはモンゴメリさんですね？」
魔人の回答に、太宰は仄暗い表情で微笑んだ。
「まあ、読まれるとは思っていたよ」
先読みもまた、勝負の醍醐味だ。
「それでは、"彼女"はなんの駒でしょう？」
ルークか、ビショップか、ポーンか。
それともキングなのか、クイーンなのか、ナイトなのか。
「さぁね…楽しみにしていたまえよ」
そもそも駒なのか、それとも。
駒を操るイレギュラーか。
二百七十八話 ［魔女の独白］→←二百七十六話 ［この王国の支配人］
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さんしょくだんご(プロフ) - この作品の中の文章の数々に心をうたれました。素晴らしい作品を本当にありがとうございます (7月24日 1時) (
レス) @page49 id: 9ce43d97c3 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - 田中りんさん» コメントありがとうございます。小泉は「これすごく便利では」と思い、喜んでいました。某幹部さんは爆発した瞬間、元相棒の仕業だと気づきました。メリークリスマス、そして良いお年を。 (2020年12月25日 19時) (レス) id: 102f3088ed (このIDを非表示/違反報告)
田中りん(プロフ) - 初コメ失礼しますー 銃で喜ぶ小泉ちゃん…私もエアガンとか大好き人間なので人のこと云えない…某幹部さんは完全なるとばっちりですねwwメリークリスマス＆良いお年を！！ (2020年12月25日 0時) (レス) id: 59051e49c3 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - まっちょりさん» お久しぶりです。楽しみに待っていてくださりありがとうございます。皆様を楽しませることができる続編をかけるように頑張ります。応援よろしくお願いします。 (2020年12月18日 23時) (レス) id: 102f3088ed (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - 雪月さん» お久しぶりです。待っていてくださりありがとうございました。20巻は驚きの嵐でした。 (2020年12月18日 23時) (レス) id: 102f3088ed (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：もこすけ
| 作成日時：2019年5月18日 18時
