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二百七十四話 [白雪姫の真実] ページ26

「不思議だと思ったことはありませんか?」



四方八方を監視カメラに囲まれた収容所にて、ドストエフスキーの声がひっそりと響く。



「彼女の異能力には、不可解な点がいくつも有る」



ドストエフスキーは何処か楽しげで、対して太宰の顔は無表情だった。
ただただ無機質に魔人を見つめていた。



「例えば、虎の少年の異能が初めて判明した時、
彼女は虎となった彼に声をかけた、すると虎は彼女の方を向いた」



「…」



「可笑しいと思いませんか?
彼女の異能は『名前と詳細を知る異能を操る』もので有るにも関わらず、
彼女はまるで"虎の少年そのもの"を操ったように見えてしまう」


虎の異能が判明したあの日。
なんて事のない記憶だが、始まりはまさにそれであった。



「その後、探偵社で異能を調べ、それを異能とした。
ですが…紐解いてみると彼女の異能は"あくまで初歩的な部分"しか判明していない」




「…異能を操る異能、それだけでも充分な危険を持っている」



「それは本当に"異能だけ"を操るものなのでしょうか?」



「…なにが云いたい?」



「いえ、例えば…"心そのものを操れば異能すらも操れる"という有り得ない話をしているだけです」



ドストエフスキーは足を組み、そして不敵に笑う。
聖女のような魔女の子の、背負う因果に同情してしまう。



「…ところで、彼女は以前、"精神操作の異能"を持つ少年と親しかったそうですね」



「それがなんだい?」



最も忌み嫌われる精神操作の異能。
それを持つQにAは手を差しのべた。



「同情、慈愛、親愛…そんな美しい糸で結ばれているのですね」



姉弟のような、似た境遇を持つ二人の異能者。
魔人が喉を鳴らして嗤う。




「あぁ、本当に素晴らしい運命です」



それが因果だとも知らずに。
哀れだ、と魔人は微笑む。
"似たモノ同士が惹かれあった"と云うこと知らない哀れな天使。



「彼女は、あの子どもを優しさで救ったのでしょうね」



歪みの中にある、真っ白な慈愛。
しかしそれはそんな綺麗なものでは無かった。



「あの二人は、"同じ異能"を持つが故に互いを大切に思ったのですから」



太宰の目が見開かれる。
それはまるで、"Aの異能が精神操作ではある"と云っているようで。



「彼女の生は…どんな罪なのでしょうね」



魔人はうっそりと微笑んだ。

二百七十五話 [垣間見える別の顔]→←二百七十三話 [借りと、神々の国の首都]



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さんしょくだんご(プロフ) - この作品の中の文章の数々に心をうたれました。素晴らしい作品を本当にありがとうございます (7月24日 1時) (レス) @page49 id: 9ce43d97c3 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - 田中りんさん» コメントありがとうございます。小泉は「これすごく便利では」と思い、喜んでいました。某幹部さんは爆発した瞬間、元相棒の仕業だと気づきました。メリークリスマス、そして良いお年を。 (2020年12月25日 19時) (レス) id: 102f3088ed (このIDを非表示/違反報告)
田中りん(プロフ) - 初コメ失礼しますー 銃で喜ぶ小泉ちゃん…私もエアガンとか大好き人間なので人のこと云えない…某幹部さんは完全なるとばっちりですねwwメリークリスマス&良いお年を!! (2020年12月25日 0時) (レス) id: 59051e49c3 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - まっちょりさん» お久しぶりです。楽しみに待っていてくださりありがとうございます。皆様を楽しませることができる続編をかけるように頑張ります。応援よろしくお願いします。 (2020年12月18日 23時) (レス) id: 102f3088ed (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - 雪月さん» お久しぶりです。待っていてくださりありがとうございました。20巻は驚きの嵐でした。 (2020年12月18日 23時) (レス) id: 102f3088ed (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もこすけ | 作成日時:2019年5月18日 18時

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