【文スト】この世界で生きるのは不可能という結論が出ました 7

二百七十話 ［一縷の希望、未来へ］ ページ22

長い日々の中で螺旋状に絡まった遺恨の糸。
それが今、漸く解けたような気がした。



「共に、この国の未来の為に」



全てを知った先に、絶望が待っていようとも。



「…ありがとう、ございます」



漸く赦された気がした。
安吾は、グッと唇を噛み、その手を握り返す。
Aと協力体制を築けた、それだけで良かったのだ。


「…僕は虫太郎さんを護送し、この情報を太宰君に伝えて来ます」



「ついでに、刑務所で首をくくらないようにとお願いします」



Aが淡々とそう云うと、虫太郎はぎょっとし、安吾は苦笑した。
そして「慥かに伝えておきます」と残し、二人はアンの部屋から出て行った。



「…」



「…」



「…」



安吾達が出て行った部屋には、静寂が訪れた。
モンゴメリは、先ほどの安吾の話を思い出し、どうしたものかと視線を泳がせた。
そして、おずおずと敦に声をかける。



「ね、ねぇ、落ち込むのは判るけど元気を…」



あと十日しか猶予がない。
十日で現場を覆すなんて無理な話だ。
それを慰めようとしたモンゴメリに返ってきたのは、



「あっはははははは！」



喜びを抑えきれない敦の笑い声だった。
あのAですら、含み笑いをしている。



「やった！やったよ二人とも！」



「私も凄く嬉しい」



「右に同じく」



「えっ、ちょっと何？」



絶望的なのに、何故笑えるのか。
モンゴメリは更に混乱した。



「な、何なのよ？辛すぎて頭が飛んでっちゃったの？」



「違うよ、判らない？」



「その逆、これは好機なんだ」



第四段階は十日後。
それまで敵は頁に何も書き込めない。
探偵社はその力で現実を歪められ、犯罪者にされた。
それは覆せないと思っていた。



「でも違った。
頁を奪って『探偵社は無実』と書き込めばいい。それで全部元に戻る！」



「十日以内に《天人五衰》を見つけ出して倒し、頁を奪う」



「十日しかない、逆に考えれば十日、２４０時間もあるんだ」



それだけ、たったそれだけなのだ。
ただ書き込むだけで、全てが終わる。



「絶望なんて、考え方ひとつで希望となり得る」



「やろう！二人とも」



敦の声に、コクリと頷く。
過去も、生まれ持った罪も今は忘れよう。



「希望が見えてきた」



一縷の希望に、未来を託して。

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