＊ ページ10
抱きつかれたことに対する衝撃で一瞬頭が真っ白になった。
悲鳴をあげる前に、耳元に太宰の吐息がかかり喉が変な音を立てた。
「は、離し…！」
「ちょっと大人しくしててね」
太宰がAの首に手を回した瞬間、Aの抵抗が止まった。
次の瞬間、まるで糸が切れた人形のようにその華奢な躰が崩れ落ちた。
「おっと…」
地面に落ちないように、少女の体を支える。
眠る姿は毒林檎を食べた白雪姫だった。
「ふふ…」
前髪を退けると、紫の瞳は静かに閉じられている。
先程、首に手を回した時に睡眠薬が塗られた針を刺したのだ。
おかげで、こんなに簡単に手に入った。
「ん〜、これからどうしようかな」
どうせこの少女の行く末を決めるのは自分なのだから、と太宰はご機嫌に少女の額にキスをした。
悪い魔法使いに白雪姫が攫われた物語。
「はぁいストップ」
そんなもの、"彼"が認めるはず無かった。
路地裏に響く銃声。
「…へぇ、これは面白い」
その場から飛びのくことで弾丸を避けた太宰は、少女を抱きかかえる男を見てニヤリと笑った。
「彼女が云っていたのは、私ではなく"私"か」
そこには、Aを抱きかかえ、過去の自分を冷たく見つめる太宰がいた。
その目には一切の温度が無い、氷のようだ。
「過去の私とはいえ、この子は渡さない。
いや…指一本触れるのも不愉快だよ」
肌を突き刺す殺気。
自分が大切にしていたものを無断に触られて怒らない者などいない。
「絶対に、君には渡さないよ」
「ふぅん…そう」
過去の太宰は眠る少女を一瞥し、口角を上げた。
「せいぜい、勝手に死なれないようにね」
簡単に命を投げ出す彼女に、置いていかれないように。
太宰はその忠告を忌々しげに聞くと、少女を抱えて暗闇へと消えていった。
過去の太宰もまた、反対方向に消えていく。
「…別に気にしてませんが」
なんだかんだあり、結局、あちらに来ていた雪の異能で未来に戻ったAと太宰。
怖かったかと聞いた太宰に、彼女はそう返した。
あまりに普通に返すので、太宰の方がキョトンとした。
「それより、新しい携帯買ってください。過去の貴方のおかげで散々だったんですから」
「…君は本当に」
黒を知って尚、拒絶すらしない少女の姿に太宰は呆れたように笑った。
また、日常が訪れる。
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もこすけ(プロフ) - あさん» ご指摘ありがとうございます。その通りでございます。直しておきます。ありがとうございました。 (2021年11月8日 17時) (
レス) id: 102f3088ed (このIDを非表示/違反報告)
あ - すみません、「あの娘は誰の子？」の小雪ちゃんのセリフで「私は過去から来たんだよ」と言っていますが「未来」の間違いではないでしょうか私の勘違いや解釈違いであったら申し訳ありません (2021年11月7日 17時) (レス) @page32 id: b7271b87d8 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - ワンコソバさん» 折角のお話、申し訳ありませんでした。応援のお言葉、ありがとうございます。これからも頑張りますので、応援よろしくお願いします。 (2019年5月5日 13時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
ワンコソバ(プロフ) - そうでしたか…。残念ですが、それからのもこすけさんが書く作品を楽しみにしてます！頑張ってください！(^○^) (2019年5月4日 20時) (レス) id: c31389e4fc (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - ワンコソバさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます。そういった応援はとても嬉しいです。リクエストなのですが、現在締め切っております。他作品とのコラボも、基本的にご本人様からのリクエストのみ受け付ける形となっています。折角のお話なのに、申し訳ありません。 (2019年5月4日 18時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：もこすけ
| 作成日時：2019年4月6日 19時
